■「基本」を続けることの難しさ

 野球界の最先端でプレーしている人たちが基本というものをどれだけ大事にしているのかを、僕はここ独立リーグで知った。逆を言えば、それだけ基本を徹底し続けることは難しいことだ、ということでもあるだろう。一流の選手たちですらそうなのだから、僕にすればもっとだ。どうしてもおろそかにしがちな視点を再確認する思いで、いつも監督やコーチの言葉を聞いている。

 さて今回はその中でも監督について書いてみたいと思う。監督の弓岡敬二郎さんは、阪急ブレーブスでショートとして活躍した選手だった。小柄ながらも俊足巧打で、ゴールデングラブ賞を2度獲得。オールスターゲームに出場したこともある方で、当然僕が弓岡監督の名前を知ったのは現役時代のことだ。

 そんな一流選手だった人とともに野球ができるのも、この独立リーグの魅力だ。弓岡監督は8月20日の僕の先発を、「お前に1日をやる。出し切ってこい」と男気あふれる言葉で伝えくれたのだけれど、この言葉に象徴されるように、昔気質の熱い方だ。

 怒るときは怒る。
 褒めるときは褒める。

 そのメリハリがあるし、何より「基本」について一番よく話をされる。監督自身、現役時代に右打ちや、バントなど基本が大事なことをコツコツとやってこられた方だから、そうした意識が強いのかもしれない。僕自身の経験で言えば、この独立リーグ以外で、帝京高校時代がもっともレベルの高い野球をやらせてもらっていた時期になるのだろうけど、そのときのチームはとにかく打って打って打ちまくる、イケイケの野球をしていた。だからまったく逆のタイプのチーム、指導に触れることができていて、この歳でまた新たな野球を知れたという喜びがある。

 後期日程が始まる前、弓岡監督は僕たち選手にミーティングでこんな言葉を掛けてくれた。チームは、前期優勝の立役者、四番で精神的支柱でもあったデニングが退団して後期からいなくなることになっていた。打撃面での不安が指摘されていたのだ。

「われわれは一番練習しているチームだ。それに自信を持って、行こう。これだけ振り込んできたのだから、間違いなくデニングの穴は埋められる。山場は9連戦、頑張っていこう」

 その9連戦は今日から始まり、ラスト2試合目が僕の先発の日だ。チームの期待に応えられるよう、監督の男気に報いれるよう、しっかりと「基本」を大事にやっていきたい。