東京にある「絵になる廃線」東京都水道局小河内線【前編】 | BEST TiMESコラム

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東京にある「絵になる廃線」東京都水道局小河内線【前編】

ぶらり大人の廃線旅 第1回 

小河内ダム建設のための都水道局専用線

  ▲前半は青梅線の奥多摩駅から第ニ水根橋梁までを歩きます。  

 

 初回に選んだのは、東京都内では「絵になる廃線」として知られる東京都水道局小河内線である。この名称が正式なものかどうか知らないが、要するに小河内ダムの建設のため現場までセメントやコンクリートの骨材となる砂利などをダムサイトまで運ぶための専用鉄道だ。後述する経緯のため今もレールや橋梁がほとんど撤去されていないため、いかにも「絵に描いたような廃線」然としている。

▲かつては氷川と称した青梅線の奥多摩駅。ここが都水道局小河内線の起点。

 国鉄青梅線の氷川駅(現JR奥多摩駅)から水根積卸場まで、多摩川に沿って遡る全長6.7キロのうちトンネルが24か所に及び、その延長の合計は3.3キロ、つまり約半分がトンネルという山岳路線であった。奥多摩駅の標高が341メートルに対して終点の水根が約510メートルだから標高差は約170メートルもあり、計算すれば平均勾配は25.4パーミル(1000メートル進んで25.4メートルの高低差を生じる勾配)に及ぶ。ふつう幹線鉄道では最急勾配が25パーミルに抑えられているので、その勾配を全区間に適用しても少し足りないほどの急峻な路線である。調べてみると最急勾配は30パーミルに設定されていたようだ。

 幸いなことに、この線路に沿って青梅街道の旧道が「奥多摩むかし道」というハイキングコースが整備されているので、そちらを歩きつつ線路を遙拝したり俯瞰し、少しはホンモノの線路も歩いてみよう。しかも終点から起点に戻るコースである。理由は簡単で、こちらの方が楽だから。

 青梅線の奥多摩駅から小河内ダム方面のバスに乗って、ダム直下の水根で降りた。ここが終点・水根積卸場の跡地最寄りの停留所だ。国道411号を通ったことがある方は、小河内ダムの手前に「鉄橋」をくぐって「こんな所になぜ鉄道が?」と不思議に思った経験があるかもしれない。これが専用鉄道の跨道橋の廃墟である。そのすぐ西側はかつてセメントや砂利を大量に積み卸ししていた場所であるが草が茂り、「立入禁止 奥多摩工業株式会社」の看板が見張っている。

▲終点・水根積卸場のすぐ手前の跨道橋「第二水根橋梁」にはガーダーが残っている。
 
 
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今尾 恵介

いまお けいすけ

1959年横浜市生まれ。中学生の頃から国土地理院発行の地形図や時刻表を眺めるのが趣味だった。音楽出版社勤務を経て、1991年にフリーランサーとして独立。旅行ガイドブック等へのイラストマップ作成、地図・旅行関係の雑誌への連載をスタート。以後、地図・鉄道関係の単行本の執筆を精力的に手がける。 膨大な地図資料をもとに、地域の来し方や行く末を読み解き、環境、政治、地方都市のあり方までを考える。(一財)日本地図センター客員研究員、(一財)地図情報センター評議員、日本地図学会「地図と地名」専門部会主査、日野市町名地番整理審議会委員。主著に『日本鉄道旅行地図帳』『日本鉄道旅行歴史地図帳』(いずれも監修/新潮社)『新・鉄道廃線跡を歩く1~5』(編著/JTB)『地形図でたどる鉄道史(東日本編・西日本編)』(JTB)『地図と鉄道省文書で読む私鉄の歩み1~3』『地図で読む昭和の日本』『地図で読む戦争の時代』 『地図で読む世界と日本』(すべて白水社)『地図入門』(講談社選書メチエ)『日本の地名遺産』(講談社+α新書)『鉄道でゆく凸凹地形の旅』(朝日新書)『日本地図のたのしみ』『地図の遊び方』(すべてちくま文庫)『路面電車』(ちくま新書)『地図マニア 空想の旅』(集英社)など多数。


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