Scene.39 本屋は、飽きない! |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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Scene.39 本屋は、飽きない!

高円寺文庫センター物語㊴

「みなさん!

今年も、文庫センターの応援をありがとうございました。来年も、弾けますので歌って踊れる文庫センターをよろしくお願いします!

あ! 今夜の会場を提供してくれた、バーボンからひと言ね」

「今夜は、ありがとうございます。

自慢のグリーンカレーも用意しているので、飲み放題で楽しんでいって下さい」

「みなさん、オレのマブダチやねん。

まだ開店して間もないけんが、バーボンハウスを応援してよ!」

出版のみなさんは、定時退社なんてないも同然。2時間3時間と制限される呑み屋は無理なので、貸切にできる気の置けない店というのは本当にありがたい。

しかも、ゲゲゲの呑み会は気安いようで、いつも誰かが誰かを誘って連れて来る。バーボンは30人なら余裕だけど、50人だと二階の床が抜けるって懸念していた。

「お疲れさまです。編集者なんだけど、サブカル好きなので連れてきました」

「あ! 8時半の男、石川ちゃんが来たのでまた乾杯!

遠くの方までグラスをカチンは無理だから、こういうときはエアーってね。エアー、乾杯!」

アグラかいて座っていながら、右に左にくるくる回転して挨拶。酒に酔う前に人に酔いそうだ。

座敷をはみ出して、廊下や階段でもお喋りの花が咲いている。

「店長、昨日で会社を辞めちゃいました。来年はどうしよう?」

「わ!

みなさん、吉村さんが会社を辞めちゃったんだって! どっか、あったらお願いね」

「初めまして、東販の後藤と言います。吉祥寺のブックスルーエの店長から、勉強してこいって飛び入りさせていただきました」

「うちの取引先は大阪屋さんだけど、いいよいいよ」

「店長、間に合った・・・出張から、さっき戻ったんですよ」

「あれ、国書刊行会の。名前、忘れちゃった・・・・

お~い! 内山くん、りえ蔵、さわっちょ、どこにいるんだ?!」

現在のバーボンハウスは高円寺北口、純情通り商店街の入り口にあります。一階のお花屋さんでは、文庫センターのバイトくんが働いていた!いまも?

「店長。バーボンさんって、いい感じっすよね。

朴訥とした雰囲気と、控えめな笑顔から伝わるオーラがあって和みますよ」

「だよね。バーボンと向かい合って呑む心地よさに気分が落ち着いて、I・Wハーパーが染みわたるんだ」

「バーボンさんと話したら、この二階に寝泊まりしているんですってね」

「うん。大人数の飲み会にも、使えるようになっているって言うしさ。

高円寺で、立ち上がろうとしているナイスガイは応援したいじゃん!」

「店長。今日は、ありがとうございました」

「バーボン、二階の床を抜けなくてごめんな。

これ、43人分の呑み代ね。年越しの足しになるよね?!」

「あれ、店長まだいおったと!」

バーボンハウス、現在の店舗の入り口風景。競争の激しい高円寺の飲食の世界で、複数店舗を持ちフェスにも進出!レジェンド・バーボンが眩しい

「初の高円寺からタクシーばい。

内山くんが、バーボンハウスに連れてきた意味は飲み込んだけんが『バーボン。ハーパー、もう一杯!』」

後日談の1.

翌週のこと、同席していた老舗版元の課長から吉村さんの問い合わせがあった。そりゃ、太鼓判を押すよ。そして後日、吉村さんは入社されたとの挨拶に来てくれた。

後日談の2.

バーボンハウスはその後、高円寺北口駅前に進出する。そして2軒目にテキーラハウスを開店すると、ロックフェスなどにも出店をする勢いのバーボンは高円寺のレジェンドになった。

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のがわ かずお

1951年 東京生まれ。書泉を経て、高円寺文庫センター店長。その後、出版社のアートン・ゴマブックス・亜紀書房顧問。本屋B&B、西日本出版社などにかかわる。 温泉とプラモデルと映画を、こよなく愛する妖怪マニア。共著『現代子育て考5.男の子育て』(現代書館)、『独断批評』(第三書館)。


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