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年収300万円あれば十分幸せに暮らせる?
カネと知識を貯めることをやめれば楽になる。

中川淳一郎×適菜収 炎上覚悟の居酒屋放談

カネはいらないから早く隠居したい

適菜 中川さんは、最近はお金はどうでもいいという感じですよね。

中川 ほんとうにどうでもいい。

——年収は300万ぐらいでもいいと言っていましたよね。今の時代には似つかわしくないというか、むしろ先を行ってるというか、中川さんは隠居に早くなりたいとおっしゃってました。

中川 うん。これから先は300万あればいい。オレはあと4年で引退しますよ。

適菜 それはいいですね。

中川 あと4年で十分なキャッシュがたまる。だから、この先は金はいらないですよ。

——身近な大事な仲間とビールがおいしく飲めればいいと。

中川 うん、それでいい。

適菜 むやみにお金があっても仕方ないですよね。

——そう考えると適菜さんはけっこう早い時期から隠居していませんか?

適菜 お金はあまり重視していないところがあって。必要以上にほしくはない。だから、嫌な仕事は断ります。

中川 それでいいと思います。

——某所に老舗の居酒屋があって、そこには年配の方が多くいらっしゃって。そこで適菜さんはもう15年以上、居住まいを正して酒を飲んでいる。

中川 26歳ぐらいから行っているんですね。

——適菜さんは、その人たちといい距離感でお話ししているんですよね。静かに飲みながらもね。

適菜 いい居酒屋は、客と店、あるいは客同士がベタベタしない。顔見知りになっても、2~3年経ってから、やっと天気の話をする程度で。疲れているときは、一人で黙って飲みたいしね。最初の10年はIという酒しか飲まなくて、10年通ったからもういいかなと思って、Sを飲むようになった。でも5年経って飽きてきたので、最近はIに戻りつつある。だからどうしたという話ですが。

中川 適菜さんが薀蓄をたれる客を嫌うのもわかります。

適菜 気持ち悪くないですか?

中川 気持ち悪い気持ち悪い。

適菜 薀蓄をたれる客と騒ぐ客。

 

変な客と大衆社会

——そういう客が喜びそうな店がありますよね?

適菜 そうですね。鮨屋もこうした風潮に迎合するようになって、いちいち産地を書いたり。第三春美鮨なんてすべての鮨種の産地を書いている。

中川 うわー、バカみたい。

 

適菜 産地を聞く客は、気持ち悪い。そこの鮨屋の主人が河岸に行って、自分の目で判断するわけですよね。その目の力が店の看板を背負うわけですよ。

中川 そうですよね。

適菜 でも、「今日の赤貝はどこの?」とか聞く客がいる。鳥肌が立つ。

中川 結局はアレでしょ、マグロだと大間しかなくて、タコとタイだったら明石しかねえみたいな。クソですよね。別にさあ、相模湾のアジでいいじゃんという話でしょう。

適菜 そっちのほうがうまいかもしれない。要するに価値判断ができないわけです。余談ですが、池袋のインチキくさい鮨屋に「天然アジ入荷」って書いてあった。というか、天然ではないアジのほうが珍しいだろうと。

中川 たぶんオレたちは超合理的なんですよ。どうですか、そのへんは?

適菜 うーん、合理的なんですかね。合理を突き詰めると合理の限界もわかる。保守思想は本当はそこを突き詰めてるんですよね。合理で世界はできていないという。匂いや肌感覚、言葉で説明できないものが、人間の根幹を支えているということだと。

——中川さんはご自身を合理的な人間だといつもはっきり言いますよね。

中川 オレは合理的ですよ。それはオレがネットで商売しているからですよ。

 

(『中川淳一郎×適菜収 炎上覚悟の居酒屋放談』つづく)

 

(プロフィール)

★中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)

1973年東京都立川市生まれ。1997年一橋大学商学部卒業、同年博報堂入社、CC局(コーポレートコミュニケーション局)配属。2001年、サラリーマンとして通用しないと諦めて退社。無職になる。その後、ライター、雑誌編集者を経て、2006年にネットニュースの編集者になる。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書)、『節約する人に貧しい人はいない』(幻冬舎)、『仕事に能力は関係ない』(KADOKAWA)等多数。6月9日に20代30代読者に向けた世渡り指南書『好きなように生きる下準備』(ベスト新書)が発売されたばかり。

★適菜 収(てきな・おさむ)

1975年山梨県生まれ。作家。哲学者。ニーチェの代表作『アンチクリスト』を現代語にした『キリスト教は邪教です!』、『ゲーテの警告 日本を滅ぼす「B層」の正体』、『ニーチェの警鐘 日本を蝕む「B層」の害毒』、『ミシマの警告 保守を偽装するB層の害毒』(以上、講談社+α新書)、『日本をダメにしたB層の研究』(講談社+α文庫)、『日本を救うC層の研究』(講談社)、『なぜ世界は不幸になったのか』(角川春樹事務所)、呉智英との共著『愚民文明の暴走』(講談社)、中野剛志・中野信子との共著『脳・戦争・ナショナリズム 近代的人間観の超克』(文春新書)など著書多数。最新刊『死ぬ前に後悔しない読書術』が好評発売中。

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