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書道家・武田双雲氏が会話するうえで、まず気を付けていることとは?

『伝わる技術』(ベスト新書)刊行記念集中連載【第二回】

 たとえば、奥さんが怒っているのに、その理由もわからないまま「何怒っているんだよ」「いいかげんにしろよ」「悪かったよ」などとひたすら、訴えかけるのはムダでしかありません。チューニングを合わせていない楽器を互いに鳴り響かせても、不協和音しか響かないのです。
 だから、そんなときは、しっかりと奥さんの気持ちを汲み取るところからはじめましょう。「どうしたの?」「大丈夫?」とあくまで優しく語りかけて、こちらが主張する前に、相手の気持ちを出してもらう。向こうがそれを拒否するならば、ムリにこじあけたりせず、ひたすら待つ。そして、ようやく相手が落ち着いたときにはじめて、「どうすればいい?」と次の一手を打ち、改善に向けた行動について話し合うというわけです。
 たとえば、僕は、雑誌やテレビのインタビューを受けるときも、最初の10分くらいはほぼ本筋と関係ない話をしてしまいます。最近あったおもしろいことなどをとにかく話したり、ライターさんやインタビュアーの方に様々な質問ボールを投げてみたりして、場を温めてから本筋に入る。
 あれはきっと自然とチューニングをしているのだと思います。「このインタビュアーの方はどんなところに好奇心のツボがあるのかな」「このスタッフのみなさんは、どういう表情を欲しがっているのかな」と、リサーチができるし、相手にも武田双雲とは実のところ、こんな人間だと理解してもらえる。他愛ない雑談を先にしたほうが、互いの出す音、求める音が具体的に見えてきて、結局のところ話が弾みやすくなるのです。
 すべてはチューニング次第。
 チューニングが済んだ相手となら、どんな不器用な言葉でも、しっかり受け取ってもらえるはずです。気持ち良く、セッションがはじまるのです。

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  • 武田 双雲
  • 2016.06.09