【半世紀以上にわたり放送されてきた、NHK大河ドラマの歴史とは?】 | BEST T!MESコラム

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半世紀以上にわたり放送されてきた、NHK大河ドラマの歴史とは?

第1作『花の生涯』から放送中の第55作『真田丸』まで、その足跡をたどる

■『独眼竜政宗』が歴代最高を記録した黄金期の80年代

 1980年代は大河ドラマ黄金期ともいえるほどの人気を博す。『おんな太閤記』に始まり、第21作『徳川家康』(1983)、第27作『春日局(かすがのつぼね)』(1989)など平均視聴率が30%を超える作品が次々と誕生した。特に第25作『独眼竜政宗』(1987)は平均視聴率が39.7%と歴代最高を記録。続く第26作『武田信玄』(1988)も39.2%という信じられないほどの数字が残っている。

 『独眼竜政宗』は主演の渡辺謙が2度目の大河ドラマ出演にして一躍スターダムにのし上がった作品だ。加えて豊臣秀吉を演じたのが大御所・勝新太郎で、勝にとってこれが唯一の大河出演。勝は「小田原で政宗が秀吉と初めて出会うのだから、そのシーンの撮影まで渡辺と会うべきでない」と言い、スタッフも両者が顔を会わせることのないよう細心の注意を払ってスケジュールを調整したという。そのおかげで当の小田原での対面は緊迫したシーンになった。

 同作で幼少期の政宗が発した「梵天丸(ぼんてんまる)もかくありたい」、『武田信玄』で大井夫人の締めくくりの台詞(ナレーション)である「今宵(こよい)はここまでに致しとうござりまする」など、大河で使われた台詞は、しばしば流行語にもなる。『春日局』では「お局様」という呼称が流行り、会社などで勤続年数の長いベテラン女性を指す用語に定着したのも面白い。

 1990年代は、難解な南北朝の動乱をまとめた第29作『太平記』(1991)、緒形直人(信長)や郷ひろみ(家康)など大胆なキャスティングが話題となった第30 作『信長 KING OF ZIPANGU』(1992)、などの意欲作が制作された。第36作『毛利元就』(1997)では、現存する毛利元就の自筆書状の署名が題字に使われ歴史ファンを喜ばせた。

 第35作『秀吉』(1996)で主役を演じた竹中直人は第53作『軍師官兵衛』(2014)で18年ぶりに秀吉役を演じている。同様に『独眼竜政宗』で徳川家康を演じた津川雅彦は第39作『葵 徳川三代』(2000)でも家康を演じ、往年のファンを喜ばせた。役者は異なるが、第44作『義経』(2005)、第49作『龍馬伝』(2010)など、初期作品と同様の日本史の著名人を主人公に据えるリバイバル的な作品も近年では制作されている。

 第43作『新選組!』(2004)は、現在放送中の第55作『真田丸』と同じく三谷幸喜が脚本を手掛けているが、同作で山南敬助を演じた堺雅人の出世作でもあった。作中で山南が切腹する第33話は非常に反響が大きく、年末にアンコール放送された。平均視聴率こそ18%未満と伸び悩んだが、翌々年1月には大河ドラマとして前代未聞の続編『新選組!!土方歳三 最期の一日』が放映。さらに2015年に放映された朝ドラ『あさが来た』では、山本耕史が土方歳三役で登場。山本は大河以外で2度も土方を演じたことになる。視聴率と相対的な人気、および視聴者の思い入れの強さは必ずしも比例しないことを窺わせる。

 その時代を象徴する俳優陣が顔を揃え、美しい衣装や音楽、優れた脚本・演出の結晶でもある大河ドラマ。実に55作品、50年以上にもわたって歴史を紡ぎ、まさに日本の昭和史・平成史とともに歩んできた番組だ。大河のように歴史を生き生きと描き、視聴者を歴史の世界へと導き、その知識欲を満たしてくれる。大河ドラマがきっかけで歴史に興味を持つ人、ご当地を旅する人も少なくない。時には、厳しい批判の声を聴くこともあるが、それも期待の裏返しだろう。「時代劇」の枠組みを超えて歩み続ける、オンリーワンともいえる番組の動向を今後も見守っていきたいものだ。

※この記事の内容は『歴史人』2016年6月号掲載誌面より、一部を抜粋したものです。

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