新幹線の礎?「弾丸列車計画」 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

BEST TiMES(ベストタイムズ) | KKベストセラーズ

新幹線の礎?「弾丸列車計画」

戦前にも計画されていた新幹線? 夢のような高速鉄道!

 当時の東海道本線、山陽本線には、まだ輸送需要に応える余力があり、のちに東海道新幹線の建設が開始されたときのような差し迫った状況、建設の必要性はなかったという実情もあったようです。

 弾丸列車計画の中止によって、掘削が開始されたトンネル(新丹那トンネル・日本坂トンネル・東山トンネル)は未完成のまま放置されてしまいますが、この工事は四半世紀もの時間を経て、新たな高速鉄道の建設に役立つことになります。

 そうです、途中まで掘り進められていたトンネルが、東海道新幹線に転用されたのです。

 また、用地買収が終わっていた区間には、いち早く試運転を行うための線路が建設され、これは建設工事と新幹線の車両開発を同時に進めることを可能にしました。東海道本線在来線の丹那トンネルは、完成に13年あまりの工期を要しましたが、並行する東海道新幹線の新丹那トンネルは、わずか4年4カ月で竣工しています。

 弾丸列車計画そのものは実現しませんでしたが、東海道新幹線の建設にはそれがしっかりと役立ったのです。

弾丸列車用として大きな建築限界で掘削したものの未完のままだった新丹那トンネルは、新幹線に転用された。昭和34( 1959 )年4月20日、新幹線起工式が同トンネル熱海口(写真)で行われた。

新幹線はすごい』より

オススメ記事

斉木 実

さいき みのる

1963年、東京都生まれ。多摩芸術学園写真学科(現・多摩美術大学美術学部2部)中退。嘱託カメラマン、スタジオアシスタントなどを務めるかたわら、鉄道写真に取り組む。現在は鉄道写真作家として鉄道誌や旅行誌のほか、幅広いメディアで活動。車両や駅などの本質をとらえ、精細に作画表現するのをライフワークとする。米屋浩二との共著で『ニッポン鉄道遺産』(交通新聞社)や『ローカル線を旅する本』(KKベストセラーズ)、池口英司との共著で『知られざる鉄道遺産 首都圏 』(交通新聞社)がある。


この著者の記事一覧

RELATED BOOKS -関連書籍-

新幹線はすごい (ベスト新書)
新幹線はすごい (ベスト新書)
  • 斉木 実
  • 2016.04.09