「国会図書館でナポリタンを」新保信長『食堂生まれ、外食育ち』【27品目】
【隔週連載】新保信長「食堂生まれ、外食育ち」27品目
自分の記憶違いかとも思いつつ、どうにも気になったので、国会図書館のサイトの問い合わせフォームから「味が変わった気がするのですが、レシピが変わったのでしょうか?」と質問してみた。図書館本来の業務と関係ないことだし、返事が来なくても仕方ないと思っていたら、なんと数日後、きっちり返事が来たのである。
〈お問合せ頂きましたナポリタンですが、調理法が変更されております。コロナ禍以前に提供していた時期は、トマトソースベースを使用しておりました。現在単品メニューで提供しているナポリタンは、トマトケチャップベースでご提供させて頂いております。(略)調理方法が異なるため味が変わったとお感じになられたことと拝察いたします〉
ああ、やっぱり……。以前のナポリタンは油っこさがなくちょっとスパイシーで、そこが好きだった。「それはナポリタンではなくトマトソーススパゲティではないか」と言われれば、そうかもしれない。というか、そういう声があって普通のナポリタンに変更した可能性も考えられる。でも、自分はコロナ禍前のトマトソースのナポリタンが好きだった。
返信メールには〈調理人に対して今回のお問い合わせ内容を伝え今後のメニュー作成の参考とさせていただきます〉とも書かれていた。こんなことでお手を煩わせてしまって恐縮だが、個人的には元に戻ってくれたらラッキーだ。いつの日かまた、あのナポリタンを食べられる日が来るのを祈っている。
ちなみに、1948年制定の国立国会図書館法の冒頭には、次のような一文がある。
〈国立国会図書館は、真理がわれらを自由にするという確信に立つて、憲法の誓約する日本の民主化と世界平和とに寄与することを使命として、ここに設立される〉
実に崇高な理念であり、ナポリタンがどうしたとか言ってる場合じゃない。「真理」も「自由」も「憲法」も蔑ろにしようとしている国会議員の皆さんにおかれましても、この理念を今一度、噛み締めていただきたいと思うのだった。
文:新保信長