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「国会図書館でナポリタンを」新保信長『食堂生まれ、外食育ち』【27品目】

【隔週連載】新保信長「食堂生まれ、外食育ち」27品目

 A~Cの3種類があって、Aランチは肉料理、Bランチは魚、Cランチはパスタというのが基本パターン。月曜から土曜までの日替わりで、全体が週ごとに入れ替わるので、相当なバリエーションが必要となる。そのせいか、定番からちょっと外れたようなメニューがちょこちょこ出てきて飽きさせないし、どれを選ぶか迷うことも少なくない。

 たとえば、ある週の火曜日は、Aランチが「チキンソテー(カレークリームソース)」、Bランチが「豆腐ハンバーグと魚の野菜あんかけ」、Cランチが「ソース焼きスパゲティ」というラインナップだった。チキンソテーは普通だがカレークリームソースとはひねりが効いている。スパゲティでソース焼きというのも珍しい。ほかにも「魚フライの玉子とじ」「ポークシチュー」など町の定食屋やレストランでもあまり見かけないメニューや、「タンドリーチキン ターメリックライス」なんて本格風のものもあった。

 もちろん「デミグラスハンバーグ(目玉焼き付き)」「サワラの西京焼き」「きのこのボロネーゼ」といった定番も多いが、「こんなもんでいいだろう」というのではなく、全体的に工夫が感じられる。バツグンにうまいわけではないが、660円(去年までは650円)という値段を考えれば全然合格だし、ボリュームも十分というか私にはちょっと多いぐらい。仕事の状況によっては毎日のように通うこともあるので、この日替わりランチはありがたい。

 そしてもうひとつ、同店のメニューで個人的にお気に入りなのがナポリタンだ。日替わりがどれもピンとこないときや量的に持て余しそうなときによく食べる。コロナ全盛期においてはメニュー縮小のため提供中止となっていたが、昨年暮れに行ったら復活していたので久しぶりに食べようと注文した。

 しかし、出てきたナポリタンは、私の知っているナポリタンではなかった。いや、ケチャップで炒めた麵にソーセージ、ピーマン、タマネギの具をからめたそれは、世間一般で言うところのナポリタンのイメージそのものではある。味も、いわゆるナポリタンに違いない。初めて入った喫茶店でナポリタンを注文してこれが出てきたら、何の疑問もなく食べるだろう。が、コロナ禍前にこの店で食べていたナポリタンは、こうじゃなかったはず……。

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新保信長

しんぼ のぶなが

流しの編集者&ライター

1964年大阪生まれ。東京大学文学部心理学科卒。流しの編集者&ライター。単行本やムックの編集・執筆を手がける。「南信長」名義でマンガ解説も。著書に『国歌斉唱♪――「君が代」と世界の国歌はどう違う?』『虎バカ本の世界』『字が汚い!』『声が通らない!』ほか。南信長名義では『現代マンガの冒険者たち』『マンガの食卓』『1979年の奇跡』など。新刊『漫画家の自画像』(左右社)が絶賛発売中です!

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