「国会図書館でナポリタンを」新保信長『食堂生まれ、外食育ち』【27品目】
【隔週連載】新保信長「食堂生まれ、外食育ち」27品目
「食堂生まれ、外食育ち」の編集者・新保信長さんが、外食にまつわるアレコレを綴っていく好評の連載エッセイ。ただし、いわゆるグルメエッセイとは違って「味には基本的に言及しない」というのがミソ。外食ならではの出来事や人間模様について、実家の食堂の思い出も含めて語られるささやかなドラマの数々。いつかあの時の〝外食〟の時空間へーー。それでは【27品目】「国会図書館でナポリタンを」をご賞味あれ!

【27品目】国会図書館でナポリタンを
仕事柄、国会図書館を利用する機会は多い。その名のとおり、国会の立法行為にまつわる調査研究などのサポートを第一目的とする国の機関だが、国会議員じゃなくても満18歳以上であれば誰でも利用できる。国内で発行されたすべての出版物は国会図書館に納入することが法律で義務付けられており、所蔵資料数は日本一。
ただし、納本制度が完璧に守られているわけではなく、私が一番必要とする古いマンガ雑誌などはかなり抜けがある。それでも、何か調べたいときはまず国会図書館に足を運ぶのが常道だ。国会図書館に行った日は、行き帰りの道のりに加えて館内で結構歩き回るので、スマホの歩数計アプリの目標歩数を達成して健康にもいい。
ここ10年ぐらいの間に利用したことのある人ならご存じだろうが、現在の国会図書館は資料の検索も閲覧請求もすべてパソコンで行う。資料のデジタル化(スキャン)も進められており、デジタル化済みの資料は画面上で閲覧できるし、複写申し込みもできる。とはいえ、デジタル化されていない資料も多いので、その場合はパソコンから閲覧請求した資料が貸出カウンターに到着するまで20~30分ほど待つことになる。
その待ち時間が、私のランチタイムだ。普段はコンビニで買ってきたものを仕事場で食べることが多いので、どんな形であれ外食できるのはうれしい。館内で食事ができるのは、本館6階の食堂、本館3階のカフェ、新館1階の喫茶店の3カ所。本館6階の食堂はいかにも公共施設の大食堂という感じで、大きなショーケースにそば・うどん・ラーメン、丼物やカレーなどのサンプルが並ぶ。目を疑うレベルの超大盛の「メガカレー」やカレーと牛丼の具の合いがけ「図書館カレー」などが人気らしい。私が食べたことがあるのは普通のカレーだけで、お味のほうも普通であった。
6階の食堂はその一回しか入ったことがないまま、コロナ禍の影響で2020年10月に営業終了しており、今は併設の売店で買うか持参したお弁当を食べる用のスペースとなっている。また、新館1階の喫茶店はフードメニューが少なく、あまり食指が動かない。したがって、私はコロナ前も今もだいたい本館3階の「ノースカフェ」で食べている。消去法的選択ではあるものの、ここの日替わりランチがなかなか楽しいのだ。