なぜ信者は教祖の復活を祈り続けるのか?「今からでも間に合う!幸福の科学入門」(後編)【もっちりーま】 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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なぜ信者は教祖の復活を祈り続けるのか?「今からでも間に合う!幸福の科学入門」(後編)【もっちりーま】

宗教二世問題から考えるべきこととは(後編)

 

5. 体制変更に根拠を与える霊言

 

■5.1 霊言の免許皆伝はどのように与えられるのか

 霊言を含めた教義変更が、外から見れば体制変更に連動した、言説(物語)を強化する役割を持つことを述べてきましたが、信者の方々はどのように霊言を捉えているのでしょうか。

 「霊言」という現象は非常にシンプルで、「隆法氏が自身の霊能力によってあの世の霊を呼び出し、その霊が隆法氏の肉体を通じて語る」というものです。長男宏洋氏が「免許皆伝を持っている」と言ったり、「職員も降霊できる」と言う人もいますが、どちらも間違いです。宏洋氏や職員は呼び出した霊を入れる肉体、「チャネラー」になることはできますが、「霊を呼び出す」こと自体は常に隆法氏が行っていました。

 前編でも述べたように、幸福の科学には「波長同通の法則」、心が良い状態であれば良い現象、良い人、良い霊存在と繋がることができるが、悪い状態であれば、悪い現象、悪い人、悪い霊存在と繋がってしまう、という教義があります。それは霊言でも同じで、自分の魂と同じレベルか、それ以下の霊を呼び出すことはできますが、自分より上の魂を呼び出すことはできません。また人の心は常に揺れ動くので、昨日天使と話せた人が今日も天使と話せるとは限りません。

 そのため幸福の科学としては、霊を呼び出す、「イタコ」という現象は誰でも可能で、得意な体質の人もいるが、本人の心境によっては悪霊に入られてしまうので避けるべき、免許皆伝はあり得ない(だからこそキリストや孔子などの高次元霊を自在に呼び出せる隆法氏が神であるという証明でもある)、というスタンスのはずです。

 

■5-2. いろんな霊の発言はどう整合性が取られているのか

 幸福の科学から出される霊言には必ず、「幸福の科学グループとしての見解と矛盾する内容を含む場合がある」という注意書きが書かれています。霊言の内容は呼び出された霊個人の意見であり、必ずしも幸福の科学の教義や公式見解ではないとされているのです。その姿勢は1997年第3回講演会『心の原理』で説かれた霊言の仕組みから一貫しています。

 外から見たら「他人の口を使って無責任に都合の良いことを言っている」だけなのですが、霊言が教義と矛盾する内容を含むのなら、なぜ幸福の科学では霊言がここまで重要視されているのでしょうか。

 実は「信者は霊言を信じていない」とか「オカルト好きだから霊言を盲信している」というのは少し的外れで、信者は霊言の “内容” ではなく、「霊言という現象」、つまり「霊界があり、個性を持った魂がある、そして隆法氏はそれを自在に呼び出すことができる」という、あの世の存在自体を信じており、その証明として霊言という現象を認識しているのです。

 もちろん「他人の口を使って無責任に都合の良いことを言ってきた」という側面を無視することはできないのですが、幸福の科学の差別的発言や反社会的な動きを非難する際、「霊言という現象」を否定することにはあまり意味がありません。

 1987年5月の第2回講演会『愛の原理』で説かれているように、「幸福の科学とは諸学問、諸宗教を統合する動き」であって、幸福の科学と矛盾したり反する意見を持つ霊人の存在さえ受け入れることは、様々な思想に「正しさ」があることを認め、それをさらに高い次元(エル・カンターレ=大川隆法)の思想が包括する、<世界平和>への動きだからです。

 要するに、信者は単なる霊現象を面白がったり、奇跡体験に感動しているのではなく(もちろんそれもありますが)、霊言の背景には霊的世界観や教団の理念があり、その証明、活動の一部として霊言を受け入れているのです。

 そして、ある霊言の矛盾や予言が外れたことを指摘しても、幸福の科学にとっては霊人の一人の見解なので教団への指摘にはならず、ある霊言を親族や身近な人が否定するように、別の霊言を本人や親族が「自分のことだ」、「あの人のことだ」と信じてしまう例もあるのです。

 幸福の科学だけでなく、奇跡現象を受け入れるあらゆる宗教団体の問題を批判する際には、その教義や信条を無視して問題を把握することはできませんが、同時に、教義や信条自体を否定しても建設的な議論にならない、という難しさがあるでしょう。

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もっちりーま

もっちりーま

幸福の科学学園高等学校卒業。慶應義塾大学卒業。現在トルコの大学の大学院で修士課程。専門は比較文化、比較教育、思考表現スタイル。アンカラ大学にてトルコ語修了(C2)EDEP(イスラーム学卓越教育センター)奨学生。https://twitter.com/Haruharuzo

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