時流に逆らってクルマ談義でも【森博嗣】連載「静かに生きて考える」第21回
森博嗣「静かに生きて考える」連載第21回
【今は乗りたいクルマがない?】
作家になるまでは、高いクルマは買えなかった。幸い、好きなクルマを一括払いで買えるようになり、何台か所有するようにもなった。ただ、メンテナンスが忙しくなるから、実働のクルマは3台がせいぜいだろう。
若い頃には、乗りたいクルマが沢山あって悩ましかったのだけれど、今はそうでもない。乗りたいクルマには、もう乗ってしまった。新しいクルマでは、欲しいものがない。
現在の主力車は4WDで、寒冷地に住んでいるから必需。この1台以外は、雪道に弱い。奥様のクルマはリアドライブだから、数年まえに近所の雪道でスタックした(その後、スコップを載せている)。僕はあと1台、クラシックカーにも乗っていて、3日に1度はドライブに出かけているけれど、雨や雪の日にはこれには乗らない。いつ故障するかわからないので、万全の態勢で出かける。幸い、一度もそういった目には遭っていないけれど、いつまで乗れるか心配だ。
乗ったクルマは、すべてガソリンエンジンである。ディーゼルに乗ってみようかな、と思った時期にドイツのメーカの不正が発覚した。「なんだ、そうだったのか」と思って、諦めた。ハイブリッドは、車重が重すぎる。
電気自動車は、まだちょっとわからない。たとえば、庭で使う道具、草刈機やブロアや除雪車など、あるいはラジコンの飛行機やヘリコプタなどで、電動のものはとにかく使用時間が短い。また、バッテリィが数年で劣化し、そのバッテリィが非常に高価だ。それらから類推して、クルマでもまだちょっと無理なんじゃないか、と疑ってしまう。
とはいえ、オースチン・ミニか、フィアット500か、スバル360の電動車を(当時のサイズのままで)作ってくれたら、たぶん買うだろう。多くは望まない。ただ、クルマを小さくしてほしい。
【自動車は、何が「自動」なのか】
以前は「手動」だったのに、今では自動が当たり前なのが、ウィンドウである。僕のクラシックカーは、ぐるぐると手で回して窓を開ける。ロックも今のクルマは電動だし、ステアリングもパワステになっている。ギアチェンジも自動になった。
しかし、運転する人間がいないとクルマは走らないのだから、まだ完全には「自動」とはいえない。自動運転は技術的に既
自分で運転を楽しむクルマは、将来「DIY」になるのだろうか?

文:森博嗣
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