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新保信長『食堂生まれ、外食育ち』【17品目】デザート嫌い

【隔週連載】新保信長「食堂生まれ、外食育ち」17品目

 あれはいったい何なのか。先日、コロナ以降久しぶりの温泉旅行に行ったのだが、そこでも夕食の最後にデザートが出た。品書きによれば「果実県産ワインジュレ掛け 有の実 マンゴー キウイ ラズベリー ミント 冷やし白玉汁粉」(「有の実」は梨の言い換え)。果物はまだしも冷やし白玉汁粉は余計だろう。

 同じく先日出席した姪の結婚披露宴の食事は和洋中華折衷メニューで個々の料理はおいしかったが、「鯛飯 赤出汁 香の物」のあとに「赤い果実とピスタチオのパルフェグラッセ」なるものが出てきて、隣の席の妻に丸投げした。

「甘いものは別腹」とよく言うが、私の腹はひとつしかない。甘いものを入れる余裕があるなら、残しがちなごはんや香の物を入れたいし、お酒ももっと飲みたい。腹と同様、口もひとつしかないので、甘いものなんかを入れたら、せっかくのおいしい料理やお酒の余韻が台無しになってしまう。ああ、もったいないもったいない。

 それでも、果物やシャーベットならまだ許せる。果物は料理に使われることもあるから料理の延長と思えなくもないし、シャーベットは凍った飲み物と思えばいい。しかし、ケーキや和菓子の類は本当に勘弁してほしい。小腹が空いたときにおやつとして食べるならともかく、なぜ食後にそんなものを食べなきゃいけないのか。

 いや、別に食べたい人が食べる分にはいいんですよ。ただ、それが当たり前のようにコース料理の最後に出てくるのがどうにも解せない。機内食で肉か魚かを選べるように、できればデザートも選択式にしてもらえるとありがたい。「あり/なし」の二択でもいいが、もしスイーツ類の代わりに何かを選べるとすれば何がいいか。

 フレンチやイタリアンなら、やはりチーズだろう。青カビのきついやつは実はちょっと苦手なのだが、生クリームよりはいい。カマンベールなどの白カビ系かウォッシュタイプをアテに赤ワインをもう一杯いただきたい。和食だったらカラスミやコノワタなどの珍味系で、お酒をもう一杯。……要するにアンタ、飲みたいだけじゃん、と言われれば返す言葉もないのだが、酒飲みとはそういうものである。

 ちなみに、ツイッターのアンケート機能で「(食後のデザート的な)甘いものは別腹ですか?」と聞いてみたところ、「別腹」54.5%、「同じ腹」35.7%、「甘いものは食べない」9.7%という結果だった(投票数277)。「別腹」は生粋のデザート好き、「同じ腹」は嫌いじゃないけどそんなには食べられない人、と解釈できよう。私と同じくデザート嫌いと思われる「甘いものは食べない」人はやはり少数派。そりゃコースにデザートが組み込まれているのもむべなるかな。が、この多様性の時代、少数派にもご配慮いただければ幸いです。

 

文:新保信長

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新保信長

しんぼ のぶなが

流しの編集者&ライター

1964年大阪生まれ。東京大学文学部心理学科卒。流しの編集者&ライター。単行本やムックの編集・執筆を手がける。「南信長」名義でマンガ解説も。著書に『国歌斉唱♪――「君が代」と世界の国歌はどう違う?』『虎バカ本の世界』『字が汚い!』『声が通らない!』ほか。南信長名義では『現代マンガの冒険者たち』『マンガの食卓』『1979年の奇跡』など。新刊『漫画家の自画像』(左右社)が絶賛発売中です!

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