自民党は新自由主義勢力の先兵として国を破壊してきた【適菜収】 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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自民党は新自由主義勢力の先兵として国を破壊してきた【適菜収】

参院選では、日本を三流国家に転落させた責任を問え!

■人治国家への転落

 

 二〇一五年の安保法制の問題についてはこれまで何度も書いてきたので、最小限にしますが、ここには「ニッポンを蝕む全体主義」を考える上で大きなヒントが含まれています。

 それは時の政権がルールを都合よく変えたことです。法の恣意的な運用です。

 この問題の根本は、集団的自衛権を現行憲法の枠内で通せるか否かです。集団的自衛権とは、「ある国家が武力攻撃を受けた場合に直接に攻撃を受けていない第三国が協力して共同で防衛を行なう権利」です。普通に憲法を読めば通せないことは自明です。ほとんどの憲法学者も歴代法制局長官も「違憲」と明言しています。

 仮に憲法との整合性の問題がクリアできたとしても、集団的自衛権の行使がわが国の国益につながるかどうかはまた別の問題です。国益につながるなら、議論を継続し、正当な手続きを経た上で、法案を通せばいいだけの話。

 ところが安倍は、仲間を集めてつくった有識者懇談会でお膳立てしてもらってから閣議決定し、「憲法解釈の基本的論理は全く変わっていない」「アメリカの戦争に巻き込まれることは絶対にない」「自衛隊のリスクが下がる」などとデマを流し、法制局長官の首をすげ替え、アメリカに行って勝手に約束し、最後に国会に諮り、強行採決しました。

 つまり、国を運営する手続きを破壊したのです。

 しまいには首相補佐官(当時)の礒崎陽輔が、「法的安定性は関係ない」と言い出しました。この時点でわが国は人治国家へ転落していたのです。

 さらに安倍は「日本の存立が脅かされ、国民の生命や権利が根底から覆される明白な危険」が「ない」と判断できない場合に、集団的自衛権の行使に踏み切る可能性に言及します。それ以前の、明白な危険が「ある」場合、つまり「存立危機事態」に武力行使できるという話をひっくり返したのです。「ない」ことなど証明できないので、やりたい放題やるということです。

 強引に安保法制を通した理由は、アメリカに媚を売るためです。

 二〇二一年一一月二九日、安倍は維新の鈴木宗男のパーティで次のように発言しました。

 

《トランプ大統領は北朝鮮から日本が攻撃を受けたら戦うが、日本はアメリカが攻撃を受けても黙って見ているだけなのは不公平。もっとお金を出さないと。こんな調子なんで、いつも反論する。「だから平和安全法制を作って、日米を助け合える同盟に変えた。そのために私は一〇パーセントも支持率を落とした」と言ったら、トランプ大統領からは「グレート! サムライだ」と言われた》

 

 恥知らずのひとことです。

 

(適菜収著『ニッポンを蝕む全体主義』祥伝社より抜粋)

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  • 目次

はじめに−−「B層」とは何か?

 

第一章 内田樹と『日本辺境論』

 

辺境と偏狭

プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神

B層グルメと某評論家

B層という言葉が出てきた経緯

なぜ日本はこんなことになってしまったのか

ルース・ベネディクトの『菊と刀』

安倍晋三の行動原理

学問のブレイクスルー

マイケル・ポランニーと暗黙知

百人一首を暗記する意味

「型」を知るということの贅沢

 

第二章 自立を拒絶する人たち

 

白井聡の『永続敗戦論』

終戦記念日という欺瞞

冗談は櫻井よしこさん

「サヨク」と「保守」の自己欺瞞

「主権の欲求不満」の解消

 

第三章 「正義」を笠に着る人たち

 

ウクライナ首都の名称変更は「正義」なのか?

「人間は見たいものしか見ない」

社会的リンチというB層の「正義」

人種問題における「正義」の暴走

「ルッキズム」批判は「正義」なのか?

言葉狩りは「正義」なのか?

若年層に選挙権を与えるのは「正義」なのか?

山本太郎と「正義感」について

 

第四章 陰謀論に走る人たち

 

「無知の知」と「無恥の恥」

不道徳としか言えない果物屋

「維新に殺される」

新型コロナは「バカ発見器」でもあった

ひっくり返って駄々をこねる老人たち

Yahoo!ニュースのコメント欄

知識はあるけど教養がないバカ

デマは言論の自由にあらず

社会の変化は元には戻らない

99%の人が知らない話

 

第五章 無責任な人たち

 

安倍の次は維新に騙されるB層

メディアの劣化が止まらない

大阪都構想のデマと事実隠蔽

総選挙で湧いてきたB層

 

第六章 恥知らずな人たち

 

飼い犬の遠吠え

安倍晋三の本質を映し出す一枚

ツッコミ待ち政治家だらけの国

日本の崩壊に気づいていないB層

日本最大の権力者は「改革バカ」

「ジューシー」発言は外部の拒絶

悪意なく嘘を重ねる人々

カルト化した自民党広報本部

百田尚樹の「歴史改ざんファンタジー」

日本人は悪に屈したネトウヨ用語を使い騒ぎ出した元首相

 

おわりに−−人間は過去を忘れ野蛮は繰り返される

 

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適菜 収

てきな おさむ

1975年山梨県生まれ。作家。ニーチェの代表作『アンチクリスト』を現代語にした『キリスト教は邪教です!』、『ゲーテの警告 日本を滅ぼす「B層」の正体』、『ニーチェの警鐘 日本を蝕む「B層」の害毒』、『ミシマの警告 保守を偽装するB層の害毒』、『小林秀雄の警告 近代はなぜ暴走したのか?」(以上、講談社+α新書)、呉智英との共著『愚民文明の暴走』(講談社)、中野剛志との共著『思想の免疫力 賢者はいかにして危機を乗り越えたか』、『遅読術』、『安倍でもわかる政治思想入門』、『日本をダメにした新B層の研究』(KKベストセラーズ)、『ニッポンを蝕む全体主義』『安倍晋三の正体』(祥伝社新書)など著書50冊以上。「適菜収のメールマガジン」も好評。https://foomii.com/00171

 

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