Scene.34 どのみち風は吹くのさ! |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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Scene.34 どのみち風は吹くのさ!

高円寺文庫センター物語㉞

浅草キッド・サイン会の興奮も冷めやらぬ一週間後、いよいよ清志郎さんの『ブーアの森』握手会。

しかも今回は、タレントとして活動してきた、せがわきりさんが児童文学作家となっての三作目に清志郎さんが絵を描いたという絵本デビュー!

せがわきりさんは、文庫センターに馴染みのあるテレビ番組『トゥナイト』『トゥナイト2』で、長くレポーターを務めていたのでことさら感慨深い。

この『ブーアの森』の発行元、東京エフエム出版のみなさんとも打ち合わせを終えた。2年前の『瀕死の双六問屋』発売時の経験から、限定250名のお客さんと野次馬対策は店内外に抜かりはない。

前回は店外の指揮だった内山くん、今回は店内だが、みんなと同様に押し黙っているのは緊張からだろう。時計の針が、1分進む音が聞こえるほど神経が研ぎ澄まされて、心臓の音まで感じられるほどになった時!

清志郎さんとせがわきりさんにマネジャーさんが、ドンピシャのタイミングでやって来た。さすが!

「店長。また来ちゃったよ、よろしくね」

間近で見るスターは、今日もノーメイクで常連客のように現れてくれちゃった! 

「清志郎さん。店長またねって、2年前の言葉にもありがとうございます!

わ!せがわきりさん、めっちゃ可愛いですね!」

そして前回と変わらず、シャッターを閉めての握手会が粛々と始まった。すると、お客さんが一斉に携帯で写真を撮ろうとした瞬間、マネジャーからのダメ出しが!

2年の歳月は、携帯カメラの普及という思いもよらない出来事が起きる。それにしても、人柄も普段着のままの清志郎さんはジーンズの上着で再び握手の合間合間にギターを持って歌ってくれた。また、せがわきりさんのさわやかな笑顔がいいな!

握手会のお客さんが終わったところで、外のスタッフを呼び入れて清志郎さん・せがわきりさんとのツーショット撮影会。

助っ人に来てくれた京子っぺが、ぶつからんばかりに近寄ってきた!

本文中にあるように、清志郎さんにグイグイ接近してた京子っぺ!この時の写真が何故かなくて、彼女が持っていて良かった!

「あのね、聞いて聞いて!

清志郎さんの手が小さい、『これでギター弾いてるのか』と思うくらい小さくて、爪の全てに可愛いシールが貼ってあったの!

でねでね。清志郎さんの手をぎゆーっと握って写真を撮ってもらったら清志郎さん、あたしがあんまり近寄るから若干、引いてました!」

「京子っぺ、よかったな。興奮し過ぎだけど!

残念だけど、そろそろお礼のご挨拶をする時間だな・・・・」

「店長。寂しい・・・・」

「清志郎さん。来月は、チャボさんの握手会もやるんですよ」

「そうなんだ。チャボに、よろしくね!

店長。またなにか、やりましょう」

 

清志郎さんの握手会は日曜日だったけど、翌日は祭日なので休ませてもらった。

さすがに疲れて、眼が覚めたら午後三時の大爆睡!

昨夜の打ち上げで飲み過ぎたのか、握手会も打ち上げも記憶が定かでない。

見上げた窓から射しこむ光が眩しい・・・・窓を開けて、思いっきり腕を伸ばしあげると顔を撫でる風が心地よい。

かぜ と なりたや 

はつなつ の かぜと なりたや 

かのひと の まへは はだかり 

かのひとの うしろより ふく 

はつなつ の はつなつ の 

かぜ と なりたや

好きな画家、川上澄生の詩が疲れを洗い流してくれる。もう季節は初夏、気分転換にグリーンのジャケットでも買いに行こうか?!

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のがわ かずお

1951年 東京生まれ。書泉を経て、高円寺文庫センター店長。その後、出版社のアートン・ゴマブックス・亜紀書房顧問。本屋B&B、西日本出版社などにかかわる。 温泉とプラモデルと映画を、こよなく愛する妖怪マニア。共著『現代子育て考5.男の子育て』(現代書館)、『独断批評』(第三書館)。


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