グローバルダイニング「時短命令は違法、特措法は合憲判決」と「緊急事態時の統計」とは【篁五郎】 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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グローバルダイニング「時短命令は違法、特措法は合憲判決」と「緊急事態時の統計」とは【篁五郎】

「ラ・ボエム」「権八」などを展開する飲食チェーン「グローバルダイニング」の社長谷川耕造氏。同社は都の時短命令が営業の自由を保障する憲法に違反するのではないかと提訴に踏み切っていた。損害賠償の請求額は104円だった。

 

 新型コロナウイルス対策の特別措置法に基づいて、東京都が営業時間短縮命令を出したのは違法だとして、飲食店を26店経営する「グローバルダイニング」(港区)が都に損害賠償を求めた訴訟が5月16日東京地裁で判決が出された。

 東京地裁は原告の主張を一部認め、「命令は特に必要と認められず、違法」したものの、「都知事に過失があるとまでは言えない」として原告側請求を棄却した。

 グローバルダイニングの長谷川耕造代表は

 「東京都が出した命令は違法であった、ということを裁判所が認定してくれた点については、うれしく思います

 このように語り、時短命令は違法と認めた点を評価した。

 代理人となる倉持麟太郎弁護士も実質的には勝訴と言明。

 「『命令が違法』という司法からのメッセージによって行政や自治体のコロナ政策が規律され顧みられるところまでが法の支配の終着駅です

 こちらも時短命令は違法であるのを認めた意義を語った。

 さらにグローバルダイニング社側の証人として出廷した京都大学大学院の藤井聡教授も「時短命令は違法」と司法が判断したとした上で、同月17日に自身のTwitterに以下のような投稿をした。

《この判決は膨大にある不当コロナ行政の氷山の一角です。だからこそ2年以上も不当に自由を奪った行政/社会のコロナ対応を絶対に忘れてはなりません.》

 このように判決を評した。ここで気になるのが、何をもって時短は違法なのかという点だ。そこで判決文を参照して検証をしたいと思う。

 判決文はグローバルダイニング社が全文公開しているのでそちらを使用する。

 まず争点として判決文には

 

1.本件命令の違法性

2.特措法及び、本件命令の違憲性

3.原告の損害

 

 以上の3点が争点だと記載されている。本件命令というのは東京都がグローバルダイニング社へ20時以降に営業をするのは止めろということ。2点目は新型コロナウイルス特措法と前述の命令は憲法違反なのか、及びグローバルダイニングを狙い撃ちで命令したのは法の下の平等や営業の自由を侵害したかどうか。3点目は時短営業によってグローバルダイニング社が被った被害金額である。

 3点目は賠償金額が104円なのを見ると、被害による損失よりも新型コロナウイルス特措法と東京都の命令が違法であるか、憲法違反ではないかを争いたいようだ。

  判決文には以下のように記載されている。

《本件命令の発出時点で、本件緊急事態宣言が3日後に解除されることにより、本件命令の効力が生じる期間は、発出当日を含めて4日間しかないことが確定しており、被告(※筆者注:東京都)はそのことを認識していた。その当時、一都三県を中心に感染再拡大の懸念があったとはいえ、飲食店の営業短縮を中心としてピンポイントで行った対策は大きな成果を上げ、同地域の感染者数は大幅に減少し、医療体制のひっ迫の緩和もされていた。

 そして、統計学に基づく分析によれば、この4日間において、本件対象施設の営業時間短縮によって来客数が減少したことにより抑止し得た新規感染者はわずかであった。

(中略)

 このような事情の下で都知事が4日間しか効力が生じない本件命令をあえて発出したことの必要性について、合理的な説明がされておらず、また、同命令を行う判断や考え方の基準について、公平性の観点からも合理的な説明はされていない。

 以上のとおりであるから、本件命令について原告(※筆者注:グローバルダイニング社)が本件要請に応じないことに加え、本件対象施設につき、原告に不利益処分を課してもやむ得ないといえる程度の個別の事情があったと認めることはできない。したがって本件命令の発出は特に必要であったと認められず、違法と言うべきである》

 簡単に説明すると、「緊急事態宣言が残り4日で解除されるのに、東京都はきちんと説明しないで20時以降の営業を止める命令を出すのは違法」だということ。ここで注意したいのが「本件命令の効力が生じる期間は、発出当日を含めて4日間しかないことが確定」と裁判所が述べている点である。つまり、あと4日で緊急事態宣言が終わるのだからわざわざ営業時間短縮命令を出す必要はなく、運用上に問題があるとして東京地裁は違法と判断した。

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篁五郎

たかむら ごろう

1973年神奈川県出身。小売業、販売業、サービス業と非正規で仕事を転々した後、フリーライターへ転身。西部邁の表現者塾ににて保守思想を学び、個人で勉強を続けている。現在、都内の医療法人と医療サイトをメインに芸能、スポーツ、プロレス、グルメ、マーケティングと雑多なジャンルで記事を執筆しつつ、鎌倉文学館館長・富岡幸一郎氏から文学者について話を聞く連載も手がけている。

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