ベストセラー漫画小林よしのりの「コロナ論」をぶった斬る【篁五郎】 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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ベストセラー漫画小林よしのりの「コロナ論」をぶった斬る【篁五郎】

 しかし先述したように、自然免疫や集団免疫を獲得するためにはワクチン接種が高いことが前提である。ワクチン接種を拒否したら自然免疫・集団免疫を獲得するのは不可能だ。小林氏は、ワクチン接種をしても再び感染者が急増しているのはワクチンに効果がないからでは?と疑問視している。残念ながらワクチンの追加接種率(3回接種)が高い国は現在、行動制限が緩和されており、マスクを外して生活ができている。

 札幌医科大学医学部 附属フロンティア医学研究所がまとめてくれたデータによると2022年4月17日現在、イギリスが57.2%、フランスが56.5%、ドイツが58.6%である。どの国も現在マスク着用の義務や行動制限をしていない。例外は韓国で、追加接種率が64.3%と高い数値を持っていながら3月に感染者数が1千万人突破するクラスターが再び発生してしまった。だから暴動が起きてしまう事態に陥ってしまったのである。

 つまり小林氏が言うような「マスクなし」「行動制限なし」で生活をするためにはワクチン接種が不可欠なので科学的に矛盾した主張をしていると言っていいだろう。

 小林氏と同じような反ワクチン論者は「コロナのメッセンジャーワクチンは遺伝子操作をしてしまう」と主張しているが、誤った情報なのはご承知の通りだ。メッセンジャーワクチンというのはウイルスのタンパク質をつくるもとになる遺伝情報の一部を注射し、人の身体の中で、この情報をもとに、ウイルスのタンパク質の一部が作られる。それに対する抗体などができることで、ウイルスに対する免疫ができる仕組みだ。遺伝子操作など一切できない。

 mRNA(メッセンジャーRNA)もコロナで急に出てきたのではなく、10年以上前から研究されていたものだ。ダウン症に効果があるか研究されていてもおかしくはないだろう。残念ながら現在までそうした研究発表はされていない。

 小林氏と井上氏は「我々はリベラルアーツの精神で言論をしている」と述べているが、こうした事実に耳を傾けずに己の主張が正しいと繰り返している。リベラルアーツとは「人間を良い意味で束縛から解放するための知識や、生きるための力を身につけるための手法」である。そのためには概念に囚われずにあらゆる学問や主張を学ばないといけない。

 しかし小林氏や井上氏は自らの主張に反対している意見を「コロナ脳」などと切って捨てて学ぶどころか意見すらまともに取り合おうとしない。自己懐疑もなく、自らの主張に執着するのはリベラルアーツの精神とは程遠いと言えるのではないだろうか。

 反マスクについても小林氏と身内がダメだったと証明してくれている。小林氏は「コロナ論」でこう記していた

「PCR検査をすれば陽性になる者がいただろうが、我が門下生はそんな馬鹿いないのでね。マスクをせずに曝露・感染を繰り返していたら、全員、自然免疫が強力になってしまっているのだ」

 ところが、2022年4月9日に秘書が新型コロナウイルス陽性だったと判明。彼と彼の妻も体調を崩していることをブログで明かしている。彼らが主張していた「自然免疫が強力になった」は間違いだったと自ら証明してしまったのだ。しかも小林氏は「コロナは風邪」だから大したことないと主張し、政府の対応を批判しておきながら秘書の自宅療養を大人しく受け入れている。

次のページ現実が、コロナ感染者の中に後遺症で苦しんでいる人がいることだ

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篁五郎

たかむら ごろう

1973年神奈川県出身。小売業、販売業、サービス業と非正規で仕事を転々した後、フリーライターへ転身。西部邁の表現者塾ににて保守思想を学び、個人で勉強を続けている。現在、都内の医療法人と医療サイトをメインに芸能、スポーツ、プロレス、グルメ、マーケティングと雑多なジャンルで記事を執筆しつつ、鎌倉文学館館長・富岡幸一郎氏から文学者について話を聞く連載も手がけている。

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