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クレイジーな人間だけが世界を変えられる?

若者だって社会を動かせる 第1回

「ばかばかしいけど面白いな、やってみろ」

 

〝格好いい大人〟との出会いは終わらない。落ちこぼれだった僕は、「最年少足立区長」を実現するために、早稲田大学への進学を目指すことにした。そのために通ったのが、映像授業で有名な東進ハイスクール。

ここでも尊敬すべき先生たちに出会った。とりわけ現代文・古文を教える板野博行先生には心底ほれ込んだ。板野先生をはじめとした諸先生方の熱心な指導のおかげで、僕は早稲田大学の教育学部に合格することができた。

 

 

 

しかし、そんな喜びはどこへやら、すぐに大学の講義には行かなくなってしまった。そこには高校時代を思わせる退屈な授業しかなかったのだ。大学に行かなくなった僕は、米倉先生が一橋大学で教えるMBA(経営学修士)の授業を聴講させてもらうようになった。そこでは米倉先生が呼んだゲストスピーカーたちが、ケーススタディを話してくれた。彼らの話は徹底的に実体験に基づいており、苦労話やその先にある成功体験に刺激を受けっぱなしだった。

 

米倉先生の影響で「何らかのイノベーションを起こしたい」という思いだけはあったものの、「じゃあ何をするのか?」が決まらない日々が続いた。

もともと僕は飽き性だ。とにかく企画を考えて方々にプレゼンをしに行くのだが、その段階でもう燃え尽きてしまっている自分がいる。仲間からすれば「あれだけの威勢で行って、もう諦めるのか?」ということの連続だったのではないだろうか。

「ヒルズチョコレート」というアイデアを考案したのは、米倉先生と親しくなってからのことだ。これは六本木ヒルズに入居している企業に出資してもらい「ヒルズNGO」連合を結成、M&Aによって児童労働が問題化しているケニアのカカオナッツ工場を買い取り、子どもたちを解放するというプランだった。

フェアな賃金で労働者を集め、そこで「ヒルズチョコレートブランド」を生産する。その収益をNGOに還元して、児童労働問題の解決に使えば、お金持ちのヒルズ族のイメージアップにもつながると考えた。六本木ヒルズの米倉先生の仕事場に通いながらいくつものアイデアに叱咤激励をもらい、その中で先生がゴーサインを出してくれた初めてのプロジェクトだった。

米倉先生はこのアイデアに「ばかばかしいけど面白いな、リーマン・ブラザーズの幹部を紹介してやるからやってみろ」と言ってくれた。結局リーマン・ブラザーズが破綻したことでこのプロジェクトは立ち消えになってしまったが、米倉先生はこうしていまに至るまで、ことあるごとに僕を前へ推し進めてくれる最高のメンターなのだ。

<『若者が社会を動かすために』より抜粋>

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税所 篤快

さいしょ あつよし

 国際教育支援NPO「e-Education」創業者。1989年生まれ、東京都足立区出身。早稲田大学を卒業後、英ロンドン大学院(UCL)へ留学。19歳で失恋と一冊の本をきっかけにバングラデシュへ。同国初の映像教育であるe-Educationプロジェクトを立ち上げ、最貧の村から国内最高峰ダッカ大学に5年連続で合格者を輩出する。同モデルは世界銀行のコンペティションで最優秀賞を受賞。2014年、アフリカの未承認国家ソマリランドで同国初の大学院JSOUを立ち上げるも過激派青年からの暗殺予告を受けてロンドンに亡命する。著書に『前へ!前へ!前へ!』『「最高の授業」を世界の果てまで届けよう』『ゆとり世代の愛国心』『突破力と無力』、最新刊に『若者が社会を動かすために』(ベストセラーズ)がある。


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  • 税所 篤快
  • 2015.10.09