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行動制限は社会を不健康にするぞ!【佐藤健志】

佐藤健志の「令和の真相」40

◆コロナ対策が失敗するメカニズム

 

 今までの話をまとめると、以下のようになります。

 

(1)コロナによる「健康への被害」は、感染拡大によっても生じるが、行動制限によっても生じる。

(2)感染拡大によって生じる「健康への被害」が、感染被害である。

(3)行動制限によって生じる「健康への被害」の代表格こそ、経済被害である。

 

 感染拡大を抑制しようとして行動制限を取ると、経済被害という「健康への被害」が生じるのですから、感染被害と経済被害の間には、たしかにトレードオフの関係がある。

 となれば行動制限を取ったところで、「健康への被害」を抑え込むことはできない。

 良くて無益、悪くすると有害という話になります。

 

 と・こ・ろ・が。

 

 『感染の令和』に収録した「予言された疫病の記録」で詳細に論じたように、感染被害と経済被害の間に成立する関係はトレードオフだけではない。

 感染が拡大すると、社会経済活動に参加できない者が増えてしまう。

 軽症であっても、高熱や全身の倦怠感をはじめ、嘔吐、下痢、血栓まで生じうる以上、重症化率が低ければ大丈夫と構えることはできません。

 

 社会経済活動に参加できない者が増えるとき、経済がちゃんと回るはずがない!

 「オミクロンのもとで社会の基盤が揺らぐ構造」で述べたとおり、社会活動全体が止まるリスクすらあります。

 感染拡大を阻止しないかぎり、感染被害はもとより、経済被害も抑え込むことはできません。

 二つの「健康への被害」が、ともに増大するのです。

 

 のみならず。

 感染被害と経済被害の間に「トレードオフの関係がある」ことと、「トレードオフの関係しか存在しない」ことを混同すると、感染拡大対策を緩めさえすれば、社会経済活動が維持できるような錯覚に陥る。

 「最強のコロナ対策は、対策を緩めることだ!」という次第ですが、この発想を真に受けて実践すると、いかなる顛末が待っているかは、同記事でお話ししたとおり。

 

 そして感染被害と経済被害の間にトレードオフの関係しかないと思い込んだまま、感染拡大阻止と社会経済活動の維持を同時に追求すると、どうなるか?

 ハイ、そうです。

 

 「人流抑制ではなく人数制限がキーワードだが、感染状況によっては人流抑制や、さらに強い対策が必要になる」

 「感染は止める。社会は止めない。ただし不要不急の外出や、都道府県をまたぐ移動は自粛してほしい」

 「場合によっては、いや、あの、恐らく間違いなく、(重症化率が)インフルエンザよりも低いかも知れない」

 

 こういった言動をすることになるのです。

 では、いかなる対応を取るのが正しいか。

  

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佐藤 健志

さとう けんじ

佐藤健志(さとう・けんじ)
 1966年、東京生まれ。評論家・作家。東京大学教養学部卒業。
 1989年、戯曲『ブロークン・ジャパニーズ』で、文化庁舞台芸術創作奨励特別賞を当時の最年少で受賞。1990年、最初の単行本となる小説『チングー・韓国の友人』(新潮社)を刊行した。
 1992年の『ゴジラとヤマトとぼくらの民主主義』(文藝春秋)より、作劇術の観点から時代や社会を分析する独自の評論活動を展開。これは21世紀に入り、政治、経済、歴史、思想、文化などの多角的な切り口を融合した、戦後日本、さらには近代日本の本質をめぐる体系的探求へと成熟する。
 主著に『平和主義は貧困への道』(KKベストセラーズ)、『右の売国、左の亡国 2020s ファイナルカット』(経営科学出版)、『僕たちは戦後史を知らない』(祥伝社)、『バラバラ殺人の文明論』(PHP研究所)、『夢見られた近代』(NTT出版)、『本格保守宣言』(新潮新書)など。共著に『対論「炎上」日本のメカニズム』(文春新書)、『国家のツジツマ』( VNC)、訳書に『[新訳]フランス革命の省察 「保守主義の父」かく語りき』( PHP研究所)、『コモン・センス 完全版』(同)がある。『[新訳]フランス革命の省察 「保守主義の父」かく語りき』は2020年12月、文庫版としてリニューアルされた(PHP文庫。解説=中野剛志氏)。
 2019年いらい、経営科学出版よりオンライン講座を配信。『痛快! 戦後ニッポンの正体』全3巻に続き、現在は『佐藤健志のニッポン崩壊の研究』全3巻が制作されている。

 

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