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ビッグボスこと新庄剛志監督は落合博満になれるのか?【篁五郎】

 一方落合氏も荒木雅博(現中日ドラゴンズ守備走塁コーチ)、井端弘和(現野球評論家)、森野将彦(現中日ドラゴンズ打撃コーチ)へ徹底的にノックをして守備力を強化し、鉄壁の野手陣を作り上げて成績を残した。落合氏のノックは速い打球を打たない。中学生でも届きそうなスピードで打つ。しかし届くか届かないかギリギリのところを狙っており、捕球するのに苦労したという。荒木氏は2004年に優勝したときにベストナインとゴールデングラブ賞を獲得している。その時に守備について聞かれると「今シーズンは、見たことのない打球が飛んでこなかった。そう、全部が北谷のサブグラウンドで、監督のノックで見た打球だった」と答えるほど実践的な打球ばかりだった。

 

 二人が打つ方ではなく守備を重視したのは確率の問題である。バッターは3割打てば一流と言われる。1試合に3回打席に立って1回しか打てない。それで一流ならば2流は4回打席に立たないとヒットが1本も打てない。しかもいつ打つのかもわからない。そんな不確実性の高いものにエネルギーを注ぐよりも、1点もやらなければ負けないのだから守備を徹底的に鍛え上げて守備率を10割近くにしたほうがいい。

 そんな考えから守備重視の考えに至ったのだろう。落合氏は森繁和ヘッドコーチに投手の全権を託して野手に専念した。森氏は2004年の開幕投手を川崎憲次郎にすると聞いたときに当時のエース川上憲伸(現野球評論家)を3戦目の先発にした。森氏は「3戦目に入れたら次のカード次第では一日飛ばすこともできるし、3戦目の先発は相手も1戦目2戦目よりかは力が落ちるから勝てる確率が高い」と見たからだ。実際に川上は17勝をマークし、沢村賞を受賞している。そうした投手の使い方ができたら新庄監督も落合氏のように名監督と呼ばれるかもしれない。

 

 落合氏は監督1年目に結果を出すための秘けつを問われると「それは意識改革でしょう」と断言。

「監督が代わることで、俺を見てくれという選手が出てくる。それをうまいこと見つけながら、全員に俺を見てくれと言われるような態勢をつくっていかないといけない」

 選手が監督が変わったことで意識が変わり、アピールしてくるのを上手に取り込むことと明かした。さらに「空気って周りが作るもんじゃないよ。監督が作るもんだ」「なぜ負けたのか。なぜ勝ったかは、その日のうちに整理していた」と語っていた。

 

 4年目の清宮幸太郎、3年目の吉田輝星と覚醒が期待される若手選手が、新庄監督になったことで明らかに目つきが変わった。吉田はキャンプ地の名護で自主トレを行い、炭水化物の摂取を抑える「ケトジェニックダイエット」に取り組んだ。おかげで筋肉量が増え、体脂肪率が減ったという。清宮も自主トレ中に新型コロナウイルスに感染してしまったものの、現在日本ナンバーワンと言ってもいい福岡ソフトバンクホークスの柳田悠岐に弟子入りし、9kgの減量に成功している。

 

 明らかに選手の意識が変わってきた。後は新庄監督がどう使うかによって更なる意識改革が進むだろう。そこで最後に落合氏が言っていた言葉を紹介したい。

「野球変わるとダメだ」

 監督退任した2011年のオフにテレビ出演した際に落合氏が言った言葉である。ロケ地である料亭の若女将がカープファンで、「カープの監督に」と声をかけたシーンがあった。落合氏は「(野村)謙二郎どうするんだ?」と返しつつも、「来年(2012年)のカープは面白いぞ。野球変わらなければな。ただ途中で変わっちゃうのがな」と語り、一度目指した野球を貫くことの大事さを語っていた。もしかしたら新庄監督が自分の目指した野球を貫けば、名監督への道が拓けるかもしれない。

 

 

文:篁五郎

1973年神奈川県出身。小売業、販売業、サービス業と非正規で仕事を転々した後、フリーライターへ転身。西部邁の表現者塾にて保守思想を学び、個人でも勉強を続けている。現在、都内の医療法人と医療サイトをメインに芸能、スポーツ、プロレス、グルメ、マーケティングと雑多なジャンルで記事を執筆しつつ、鎌倉文学館館長・富岡幸一郎氏から文学者について話を聞く連載も手がけている。

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たかむら ごろう

1973年神奈川県出身。小売業、販売業、サービス業と非正規で仕事を転々した後、フリーライターへ転身。西部邁の表現者塾ににて保守思想を学び、個人で勉強を続けている。現在、都内の医療法人と医療サイトをメインに芸能、スポーツ、プロレス、グルメ、マーケティングと雑多なジャンルで記事を執筆しつつ、鎌倉文学館館長・富岡幸一郎氏から文学者について話を聞く連載も手がけている。

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