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Scene.15 熱い風に、灼けるって!

高円寺文庫センター物語⑮

「店長、このURCレコードは持ってないよ」と、中川五郎さん。

「店長、ボクも持っていないのに。よく持っていたね」と、高田渡さん。

文庫センターでの『中川五郎サイン会』を終えて、会場を高円寺社会教育会館に移したミニ・ライブ前のひととき。

渡さんが合流されての打ち合わせでは、このレコードで盛り上がった!

五郎さんと渡さんのサイン入りURCレーベル・レコード。共に片面は別のミュージシャン。

この国の若者たちが、熱かった時代。東京では、新宿や高田馬場にお茶の水・新橋と街も燃え上がった頃のこと。

新宿西口広場の反戦フォーク集会を機動隊に追い出され、ボクは地元の池袋西口公園で「反戦フォーク」をギター抱えて歌っていた。

URCレーベルとは「アングラ・レコード・クラブ」といい、その機関誌『月刊フォーク・リポート』からも、彼らの歌を覚える原点だった。

当時は大阪の70年万国博覧会(万博)に対抗して、大阪城公園で開かれた反博や梅田駅地下街での街頭フォーク集会にも参加した。

九州一周ヒッチハイクの帰り、お金もなくてバイトをしながら二週間の大阪滞在になった。初めての素うどんは、無色透明が旅の寂寞感を染み渡らせるばかり。

寝泊まりさせて貰った先では、反戦フォークの「大ヒット」曲『え~ちゃんのバラード』や『解放区を作ろう』を作者から、直に教えてもらう偶然に恵まれた。

東京の反戦フォーク集会では、まるで、テーマ曲のように「歌わされていた」岡林信康の『友よ』。

それでも、渡さんの『自衛隊に入ろう』、五郎さんの『うた』と、好きな歌を歌えるので、我慢して歌っていた頃。忘れられない思い出がある。

池袋西口公園に、乱闘服の機動隊が一個分隊やって来るのが見えた。

面倒なことになるかなっと思っていたら、隊長が真っ直ぐボクに歩み寄ってくるではないか!

「旭クリーニングのボンじゃないか?! 池袋署の柔道場に遊びに来ていたから、覚えている。警備課長でね、池袋署に戻ったんだよ(笑)」

だから地元って、嫌なんだよ・・・・。

そんなこんなの時代。フォーク・シンガーのカリスマだった五郎さんや渡さんを前にしても、彼らの歌「おまえベトナム、ナパームやガソリンで燃えてる」「おいでよ、ぼくのベッドに」「自衛隊に入ろう」と、クチずさまずにはいられなかったものだから・・・・お二人とも、驚きかつ喜んでくれた! 

サイン会を終えて、中川五郎さんと本屋スタッフの集合写真。ライブイベントの写真がないのが残念!

ボクのレコードには、しっかりサインもいただいた極私的思い入れのあるイベント。

五郎さんの新刊『ロメオ塾』は、親しくしているリトルモアからの刊行で、応援に社員が大勢で来てくれた。来客25名、問題ない! なによりボクが楽しんだ。

その夜の会場は、阿波踊りの練習をする祭囃子が聴こえていた。

 

また中央線の人身事故、って飛び込み自殺かよぉ・・・・今週は3回って新記録じゃないの! 

店を開けるのに遅刻しちゃうって、小走りに店まで来て・・・・あれ? シャッター、開くじゃん! 

え!ドア、開いてるし?!

 
 
 
 
 
 
 
 
 
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のがわ かずお

1951年 東京生まれ。書泉を経て、高円寺文庫センター店長。その後、出版社のアートン・ゴマブックス・亜紀書房顧問。本屋B&B、西日本出版社などにかかわる。 温泉とプラモデルと映画を、こよなく愛する妖怪マニア。共著『現代子育て考5.男の子育て』(現代書館)、『独断批評』(第三書館)。


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