巨人「中田翔」と「報知新聞」は暴力事件をすっかり忘れたのだろうか【篁五郎】 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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巨人「中田翔」と「報知新聞」は暴力事件をすっかり忘れたのだろうか【篁五郎】

昨年は日本ハムで暴行問題を起こし、8月に無償トレードで巨人に移籍。加入後は2度の2軍降格を味わう苦しいシーズンとなったが、充実の自主トレを経て「今はもう自信しかない。また新たな中田翔を作り上げていく」と自信満々に言い切った中田翔。

 

 もうすぐキャンプインが近づくプロ野球では、自主トレに励む各球団の選手がスポーツ紙の紙面を賑わせている。昨年8月に後輩選手へ暴行をしていたことが明らかになった中田翔もその一人である。中田は、沖縄県・石垣島で後輩の巨人・秋広、日本ハム・姫野、ソフトバンク・黒瀬らとの合同練習を行い、トレーニングで体重を17kg増量したことを明かした。

 そして驚かれたのが、同じチームの後輩であるもののポジションが被る秋広の弟子入り志願を快諾したことであった。中田は1月13日に行ったリモート会見で「しっかり体をいじめ抜く期間で、遊ぶ期間ではない。この時期にこれだけやる、というのを一緒に苦しみながら示したい」と答えた。一方の秋広も志願した理由を「日本ハムの時から守備が一番うまいなと思っていたことと、2軍で一緒にやっていたときにすごい練習熱心だと。タイトルも取られている方が、ああいう姿勢でやっていたのが勉強になった。それに比べて自分はもっとやらなきゃいけないと思い、姿勢を勉強したいと思いました」と説明し、ハードな練習を送っているという。

 中田も会見で今季の意気込みを聞かれると「今は自信しかない。今までの中田翔に戻っているはずです。(本塁打は)札幌ドームで打っていた感覚で自分のスイングができればいい。キャリアハイは打ちたい」と自信を覗かせた。原監督も「本来の姿を見ていない」「中田も黙ってないでしょう」と語っていたことを耳にすると、「もちろん黙っているつもりもない。普通にやれればいいと思います」と言い放った。

 各紙がこうして中田の自主トレを取り上げているが、筆者は中田の発言でどうしても引っかかっていることがある。それは昨年12月の契約更改の際に「萎縮してしまっている自分がいた」と告白していたのと打って変わって、「去年のシーズンはもう終わったので、自分らしく今までどおりにやっていきたい。結果を残して1日も早くファンのみなさんに認めてもらえるよう、性根をすえてやっていきたい」と話したことだ。

「今までどおり」というのはグラウンドで他チームの後輩選手を脅し(過去に大阪桐蔭の後輩である西武森友哉を一塁塁上で脅したことがある)、気に入らない後輩に暴力を振るうことだろうか? そんな考えが頭をよぎってしまった。確かに「もう終わったことなんだから放っておいてやれよ」という巨人ファンの声が出てきそうだが、中田は責任など取っていない。移籍会見で謝罪をしただけである。年俸は3億4千万円から大幅減の1億5千万円まで下がったが、それは打率1割5分4厘、3本塁打と高年俸にふさわしい働きをしていないからである。 この件については日本ハムも中田をトレードに出しただけで誤魔化してはいるけど、当事者の中田は契約更改の場でも自主トレのリモート会見でも特に反省の言葉を出していないのが気になったのである。

次のページスポーツ紙も中田の暴力事件はなかったかのような扱いをしている

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篁五郎

たかむら ごろう

1973年神奈川県出身。小売業、販売業、サービス業と非正規で仕事を転々した後、フリーライターへ転身。西部邁の表現者塾ににて保守思想を学び、個人で勉強を続けている。現在、都内の医療法人と医療サイトをメインに芸能、スポーツ、プロレス、グルメ、マーケティングと雑多なジャンルで記事を執筆しつつ、鎌倉文学館館長・富岡幸一郎氏から文学者について話を聞く連載も手がけている。

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