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オミクロンのもとで経済を回す方法【佐藤健志】

佐藤健志の「令和の真相」37

 

◆経済重視なら軽症も無視できない

 

 オミクロン株の場合、肺炎が重症化して亡くなるリスクは確かに低い。

 だからと言って医療逼迫のリスクがなくなるわけではありませんし、罹患後症状に苦しむリスクも残っていますが、「肺炎がひどくなりさえしなければ、あとは知ったことではない」と割り切るかぎり、そう心配しなくてもいいでしょう。

 

 しかしここで、あらためて問わねばなりません。

 おい、経済はどうするんだ!!

 

 重症化しにくいかわりに、オミクロンは感染力が強い。

 つまり軽症や無症状の感染者は急速に増えますが、軽症の症状とはいかなるものか。

 アメリカで内科医としてコロナ患者の診療にもあたる安川康介さんは、次のようにまとめました。

 

 【感染しても無症状や短期間のせきや発熱で済む人がいる一方、つらい「軽症」もある。新型コロナの症状は多様で、せきや発熱のほか、嘔吐(おうと)や下痢で脱水を起こしたり、血栓ができたりすることもある。また症状が何日も続く人も多い。1週間、発熱とせきが続き、ろくに食べることもできないという状況になれば、相当つらいはず。それでも肺炎が診断されなければ軽症になる】(カッコは原文)

 

 嘔吐・脱水・血栓とまでは行かなくとも、38度〜39度の熱が出て、全身がだるくなるのはかなり一般的な模様。

 

 それでも入院の必要はないかも知れませんよ。

 ICU、集中治療室に行く必要はさらにないでしょう。

 ただしポイントはこちら。

 

 その状態で仕事に行けるか?

 

 無理でしょうに。

 ということは、社会経済活動(財やサービスの生産・供給)に参加できない。

 ネット通販でも活用すれば、消費には参加できる可能性があるものの、けっこうな高熱があって、全身がだるいとなると、なかなか画面をポチる気にもならないのでは。

 

 ワクチン接種をすませ、かつ効力が持続している場合、症状はもっと軽くなることが多い。

 ただし周囲に感染させるリスクを考慮するなら、一定期間の隔離は不可避。

 無症状の感染者や、濃厚接触者についても同様となります。

 2022113日現在、わが国には接種を1度も受けていない人が、まだ2000万人以上いるのです。

 

 肺炎が重症化したり、肺炎で亡くなったりすることはなくとも、社会経済活動に参加できない人が急速に増えてゆくとき、はたして経済は回るでしょうか?

 

 お分かりですね。

 オミクロンのもとで経済を回す方法、それは軽症や無症状の感染者も増やさないことなのです。

 要するに感染拡大を抑え込むこと。

 ところがこの変異株、感染力にかけては強いとくる。

 現に2022年に入っていらい、感染は急拡大しています。

 

 で、何が恐るるに足らないって?

 

 ちなみにコロナについては、202112月に刊行された『感染の令和 または あらかじめ失われた日本へ』でも詳細に論じました。

 あわせてご覧になると、いっそう理解が深まることでしょう。

 

文:佐藤健志

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佐藤 健志

さとう けんじ

佐藤健志(さとう・けんじ)
 1966年、東京生まれ。評論家・作家。東京大学教養学部卒業。
 1989年、戯曲『ブロークン・ジャパニーズ』で、文化庁舞台芸術創作奨励特別賞を当時の最年少で受賞。1990年、最初の単行本となる小説『チングー・韓国の友人』(新潮社)を刊行した。
 1992年の『ゴジラとヤマトとぼくらの民主主義』(文藝春秋)より、作劇術の観点から時代や社会を分析する独自の評論活動を展開。これは21世紀に入り、政治、経済、歴史、思想、文化などの多角的な切り口を融合した、戦後日本、さらには近代日本の本質をめぐる体系的探求へと成熟する。
 主著に『平和主義は貧困への道』(KKベストセラーズ)、『右の売国、左の亡国 2020s ファイナルカット』(経営科学出版)、『僕たちは戦後史を知らない』(祥伝社)、『バラバラ殺人の文明論』(PHP研究所)、『夢見られた近代』(NTT出版)、『本格保守宣言』(新潮新書)など。共著に『対論「炎上」日本のメカニズム』(文春新書)、『国家のツジツマ』( VNC)、訳書に『[新訳]フランス革命の省察 「保守主義の父」かく語りき』( PHP研究所)、『コモン・センス 完全版』(同)がある。『[新訳]フランス革命の省察 「保守主義の父」かく語りき』は2020年12月、文庫版としてリニューアルされた(PHP文庫。解説=中野剛志氏)。
 2019年いらい、経営科学出版よりオンライン講座を配信。『痛快! 戦後ニッポンの正体』全3巻に続き、現在は『佐藤健志のニッポン崩壊の研究』全3巻が制作されている。

 

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