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オミクロンのもとで経済を回す方法【佐藤健志】

佐藤健志の「令和の真相」37

 

◆おい、経済はどうするんだ!

 

 オミクロン株は感染力が強いかわりに、重症化率が低いとされる。

 感染しても軽症、もしくは無症状ですむことが多いのです。

 

 つまり感染者数に比して、医療体制に与える負荷は少なめ。

 こうして、一部で楽観論が生まれました。

 

 だったら医療の逼迫を恐れる必要はないじゃないか!

 感染拡大の前と同じように行動していいはずだ!

 オミクロン、恐るるに足らず!!

 

 何とも心強いではありませんか。

 ただし、主張の内容が正しければの話。

 ちょっと検証しましょう。

 まず浮かび上がるのは以下の二点です。

 

 

(1)重症化率が低いことは、医療逼迫が起きないことを保証しない。

 感染者の数が十分に増加すれば、入院を必要とする者の数も必然的に増えます。この場合、それらの多くが重症にいたらなかったとしても、医療逼迫が起こるリスクは高まる。

 重症者さえ増えなければ、医療逼迫は生じずにすむというわけではないのです。アメリカでは111日の時点で、コロナの入院患者が過去最多となり、医療逼迫が懸念されるにいたりました。

 

(2)コロナの症状をめぐる分類は、肺炎が生じるかどうかに特化したものにすぎない。

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は、肺炎、ないし呼吸器疾患について軽症や無症状であろうと、さまざまな罹患後症状、いわゆる後遺症を生じさせるリスクを持っています。アメリカの有名な総合病院「メイヨー・クリニック」は、ホームページでこう解説しました。

 

 【新型コロナウイルス感染症は基本的に肺疾患を起こす病気と見られていますが、その他にも多くの臓器に損傷を与えうるものです。それらの臓器には、心臓、腎臓、脳も含まれます。臓器が損傷を受けた場合、感染症から回復したあとも合併症が続く恐れがあります】

 

 やはりコロナウイルスによって引き起こされたSARS(重症急性呼吸器症候群)やMERS(中東呼吸器症候群)の場合、「呼吸器の病気」であることが名称によって特定されていました。けれども今回の病気は、「新型コロナウイルス感染症」(COVID-19)であって、「新型コロナウイルス呼吸器症候群」(COVIRS-19)ではないのです。

 

 どうも「恐るるに足らず」と胸を張れなくなってくるのですが・・・

 最大の問題はこちら。

 

 おい、経済はどうするんだ!!

 

 コロナ対策は(肺炎の)重症者や死者が少なければいいというものではありません。

 それでよしと構える態度は、いわば「肺炎(防止)至上主義」。

 経済も回さねばならないのです。

 2020年、パンデミックが始まったころから、「感染予防と社会経済活動の両立」が叫ばれてきたではありませんか。

 

 そしてここにいたり、オミクロンの真のヤバさが明らかになるのです。

 

次のページ経済重視なら軽症も無視できない

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佐藤 健志

さとう けんじ

佐藤健志(さとう・けんじ)
 1966年、東京生まれ。評論家・作家。東京大学教養学部卒業。
 1989年、戯曲『ブロークン・ジャパニーズ』で、文化庁舞台芸術創作奨励特別賞を当時の最年少で受賞。1990年、最初の単行本となる小説『チングー・韓国の友人』(新潮社)を刊行した。
 1992年の『ゴジラとヤマトとぼくらの民主主義』(文藝春秋)より、作劇術の観点から時代や社会を分析する独自の評論活動を展開。これは21世紀に入り、政治、経済、歴史、思想、文化などの多角的な切り口を融合した、戦後日本、さらには近代日本の本質をめぐる体系的探求へと成熟する。
 主著に『平和主義は貧困への道』(KKベストセラーズ)、『右の売国、左の亡国 2020s ファイナルカット』(経営科学出版)、『僕たちは戦後史を知らない』(祥伝社)、『バラバラ殺人の文明論』(PHP研究所)、『夢見られた近代』(NTT出版)、『本格保守宣言』(新潮新書)など。共著に『対論「炎上」日本のメカニズム』(文春新書)、『国家のツジツマ』( VNC)、訳書に『[新訳]フランス革命の省察 「保守主義の父」かく語りき』( PHP研究所)、『コモン・センス 完全版』(同)がある。『[新訳]フランス革命の省察 「保守主義の父」かく語りき』は2020年12月、文庫版としてリニューアルされた(PHP文庫。解説=中野剛志氏)。
 2019年いらい、経営科学出版よりオンライン講座を配信。『痛快! 戦後ニッポンの正体』全3巻に続き、現在は『佐藤健志のニッポン崩壊の研究』全3巻が制作されている。

 

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