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そもそも、なんで「働く」んだっけ?
~ニート株式会社の実験と冒険~

現在観測 第20回

 

「俺の方が正しい」と、
ニートは言った

結論から言えば、僕たちにとって一番大切なのは、働けているかどうかではなく、社会と接続できているかどうかなのだと思います。

 

 

実際、時間を持てあましたニートたちが会社をつくって取締役になったからといって、やっぱり簡単にお金を稼げたりはしなかったし、普通の社会人が体験できないような面白い仕事や「おいしい」仕事にありつけたりするわけでもありませんでした。

 

そして、自分たちで会社を経営することに限界を感じて、普通に就職したり、バイトをするメンバーも出てきました。案外、会社や組織に雇われるというのは、幸せなことなのかもしれません。社会には、不自由と引き換えに安定を約束してくれる場所もあります。

 

一方で、会社というものは案外簡単につくれるんだということを知って、独立するメンバーも出てきました。もちろん、NEET株式会社の中で新しいことをはじめて、いろいろ悩んだり苦労したりしているメンバーもたくさんいます。商品をつくったけど、全然売れなかったり、チームメンバーと喧嘩したり、途中でもう嫌になったり。

 

NEET株式会社では、毎日誰かと誰かが衝突していました。すぐに言い合いや喧嘩がはじまり、お互いに一歩も譲らない。

そしてそれは、いかにして儲けるか? 事業を成功させるか? というお金のことについてではなく、お互いの理屈や考えの優位性や「プライド」をめぐる戦いでした。

 

例えば、誰かが新しいサービスを考えて企画書をつくり、それをみんなに公開すると、「このデータの前提がおかしい」「これは条例やモラルに反する可能性がある、知識が足りなすぎる」といった指摘がやみません。

 

そこにあるのは、「俺の方がもっと詳しく知っているぞ」という優位性の主張でした。この主張をめぐる争いは、まさに人間としての営みの真骨頂であったように感じます。

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若新 雄純

わかしん ゆうじゅん

コミュニケーションプロデューサー/慶應義塾大学特任助教。福井県若狭町生まれ。慶應義塾大学大学院修士課程(政策・メディア)修了。専門は産業・組織心理学とコミュニケーション論。全員がニートで取締役の「NEET株式会社」や女子高生がまちづくりを担う「鯖江市役所JK課」など、多様な働き方や組織のあり方を模索・提案する実験的プロジェクトを多数企画・実施中。著書に『創造的脱力』(光文社新書)がある。

若新ワールドhttp://wakashin.com/


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