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Scene.6 本屋はホット&クール。

高円寺文庫センター物語⑥

「雪は降る、とんずら姉ちゃん。あ~ぁ、客は来ない」

「それ、店長。アダモでしょ! アダモステとか言わないで、雪かきでしょ」

「わかったよ、りえ蔵・・・店番、頼むわ」

東京は、ひと冬に2・3度の積雪なのでスコップの用意はない。お向かいのニューバーグに借りようと思ったら、閉まっていて誰もいない。

はす向かいの花屋さんが「マスター、雪かきで転んで入院したのよ」って、驚きのニュース! ボクらが、店に来る前にか!

ランチの心配はともかく、マスターはボクよりガタイ良くても歳だからな・・・

いまはとにかく除雪。見習い看護婦バイトの彩ちゃんと、店の周囲の雪かきに精を出す!

「彩ちゃん、ご苦労さん。ひと休みしなよ。りえ蔵、マスターの入院先を調べてよ。お見舞いに行かないと! さわっちょとつるちゃん、店内のモップかけを頼むな」

マスターの転倒騒ぎで、初めてご夫妻の苗字を知った。そういえば、バーボンも花屋さんも大将のママさんも苗字は知らないご近所づきあい。

 

アタマの中には、THE DOORSの「Light My Fire」が流れる。

Scene.6 本屋はホット&クール。

 

「店長、毎日新聞の方がお話したいってみえましたよ」

「ゲゲゲ、これまでは業界の身内的な取材だったのに毎日新聞か!」

出版社の営業さんは、出かけた先の情報を社内に持ち帰るので編集さんからの反応は早かった。話題になる本屋とみれば、すぐに取材が入る。

最初の取材は、平凡社の雑誌『QA』。とにかく店のPRになるならと快諾した。文庫センターを取り上げてくれるなんてと、嬉しくて忘れられない雑誌になった。

それからは、立て続けに取材されて頻繁に雑誌に紹介されるようになっていった。

さすがに業界紙は早くて『新文化』は、編集長が取材に来てくれた。

『本の雑誌』『ガロ』そして、『クイック・ジャパン』は6号目に登場。『ダカーポ』は「文庫本特集」で紹介された。筑摩書房の新雑誌『頓智』再び『新文化』、『日本読書新聞』『BARF OUT!』『MEN’S NON-NO』『東京人』『東京ウォーカー』『TOKYO1週間』『GET ON!』『流行通信』、そして、朝日新聞までもが「日曜読書欄」にと取材に来た。

毎日新聞の女性記者は「新聞って、若者離れが激しいでしょう。今後は夕刊で若者文化を積極的に取り上げていきたいので、取材協力をお願いします」と言って、飲み会まで来てくれるようになった。

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のがわ かずお

1951年 東京生まれ。書泉を経て、高円寺文庫センター店長。その後、出版社のアートン・ゴマブックス・亜紀書房顧問。本屋B&B、西日本出版社などにかかわる。 温泉とプラモデルと映画を、こよなく愛する妖怪マニア。共著『現代子育て考5.男の子育て』(現代書館)、『独断批評』(第三書館)。


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