◆「今でしょ!」

 前回の投稿後、一番多くいただいた質問が、「長期投資をいつ始めるべきか」という質問でした。新型コロナショックで米国の株式相場が暴落しているときですから、今は始めづらいという気持ちはわかります。しかし答えは簡単です。「今始めるべき」です。

 下の【図表1】を見てください。これは前回引用した「バークシャーハサウェイ社」のHPに掲載されているデータを元に、1965年に100万円をS&P500連動の投資信託に投資した場合、資産がどのように増えていくのかを著者がグラフにしたものです。

【註】https://www.berkshirehathaway.com/letters/2019ltr.pdfのデータを活用

 どうです? 一目瞭然でしょう。長期で投資するのであれば「どこで投資しても儲かる」ということがわかっていただけると思います。
試しにデータの存在する1965年以降2019年までの期間中、15年間の長期投資を行った場合の、始める年による平均利回りの違いを確認してみました。
最低は2000年にはじめた場合(2000~2014年)。平均利回りは6.1%にとどまります。これは1965~2019年の平均利回り11.5%と比べるとかなり劣ります。この期間は、2002年のITバブル崩壊2008年のリーマンショック、両方の暴落が含まれますので、平均利回りが低いのです。しかしこれでも平均利回りで6.1%という大きな利益が確保されることがわかります。
コロナショックはまだまだ先が見えません。。S&P500もこれから更に3割程度の下落もあり得ると私は考えています。手元にまとまった資金があって慎重を期したい方は今後1年間、資産を分割して毎月定額で買っていくのが手堅いやり方だと思います。面倒くさい人はすぐに全額買ってしまいましょう。多少下がることもあるかもしれませんが、長期的には割安で買えたことになるのは間違いありませんから。給料を元に、毎月の積立投資を始めるなら今すぐです。これから1~2年は下がるかもしれません。下がったら喜んで買い続ければ良いのです。それだけ買い時が続いているということですから。

◆アメリカの成長はまだまだ続く

 次に多かった質問が、「アメリカの成長はいつまでも続くのだろうか?」「日本株や中国株ではダメなのか?」「いつまでも株式相場は上がり続けるのだろうか?」という、長期的見通しに関する質問でした。

 下の【図表2】を見てください。これは国連が発表している推計値データをもとに、2020年の各国の人口を100%として、主要国の今後の人口推移を著者がグラフにしたものです。

【註】https://population.un.org/wpp/Download/Standard/Population/に掲載されているファイルTotal Population-Both SexesのMEDIUM VARIANTのデータを活用

 国の未来の人口を決める出生率や現在の人口構成、平均寿命等の数値は簡単には変わらないため、人口についてはかなり高い精度で未来の予測が可能です。そしてある国の人口が増えれば、基本的にはその国のGDPも比例して増加します。

 日本にいると今後は世界的に人口の上昇が止まるように思い込みがちですが、それは全くの誤解です。今後30年間で世界人口は発展途上国を中心に25%も増加します。当然世界経済はそれ以上に拡大し、連載第3回で紹介したピケティの法則「r>g」にしたがい、株式相場はそれ以上に拡大を続けるでしょう。世界経済の成長トレンドはまだまだ続くことは明らかなのです。

 一方、現在の世界経済のキープレイヤーであるドイツは2023年をピークに、中国は2043年をピークに減少をはじめます。ではアメリカは? 中国の人口が減少に転じた後もアメリカは堅調に人口を増やし、なんと2050年には2020年に比べ15%も人口を増やしているのです。

 一方で我が国日本は、残念ながら既に10年前の2010年から人口が減少しています。そして2050年には2020年の人口対比、16%も人口が減少しているのです。仮に人口が減少してGDPが減少しても、ピケティの法則により日経平均がプラス成長を実現する可能性はもちろんあります。しかし-16%からスタートしなければならない日経平均と、+15%からスタートできるS&P、どちらを買うべきか、それは明白だと思います。加えてアメリカは世界の覇権国です。アメリカの上場企業は覇権国企業としての特権を最大限に活用し、世界経済全体の成長を自分たちの成長として取り込むことが可能です。

 私は古いタイプの愛国者なので、本音では日本株を推奨したいのですが、人口推計一つとっても、米国株を選ぶべき理由が明白なのです。