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感染免疫学の権威・岡田晴恵教授が緊急提言!「なぜ感染症は人類最大の敵なのか?」【新型コロナウイルスと闘う①】

新型インフルエンザの脅威

大量の犠牲者が出た理由は、新型コロナと同じだった…

 

病棟で治療を受けるスペインかぜに罹患したフォート・ ライリー陸軍基地(カンザス州)の兵士1918年頃(パブリック・ドメイン)

 なぜ、これほど大量の犠牲者を出したのであろうか。それはこの新型インフルエンザに対して地球上のほとんどすべての人間に免疫がなかったためだったことはいうまでもないが、さらにスペインかぜのウイルスは、人に対して強い病原性を持っていたためである。

 スペインかぜ(H1N1)は1918年の春に起こり、夏には流行はいったん下火になったが、これは第一波であった。第二波は秋をむかえる8月の末にやってきた。まずフランスの港町に上陸し、それが船に乗って北米やアフリカへ輸送されていった。この第二波が、とくに大きな健康被害をもたらした。 症状には、肺に水が溜まり呼吸困難となって数時間から3日のうちに死亡するタイプと、悪寒、発熱といった通常のインフルエンザ症状から、細菌感染による合併症で肺炎となるタイプの2つが認められた。

スペイン風邪による健康被害

 さらにこのスペインかぜの特徴は、通常ではあまり重症化しない若い壮健な世代にも多くの犠牲者が出たことだった。戦時下であったことを考慮して、従軍していないイギリスの女性の死亡統計データを見ても、25〜30歳に死亡者数のピークがある。さらに米国のデータでも、15〜34歳までの肺炎による死亡率は前年の20倍となり、全米の平均寿命は 12歳も短くなっている。 なぜ若者の世代で大きな犠牲を出したのか、その理由はいまだはっきりとはしていないが、 戦争が終結し、スペインかぜが過ぎ去った後の社会の復興に、働き盛りの年代の減少は大きな足かせとなったのであった。

 その後、その子孫ウイルスはふつうの病原性にもどって、小さな連続変異をくり返しながら、 インフルエンザとして39年間流行する。そして40年後、またしても新型インフルエンザが出現した。1957年に現われたアジアかぜ(H2N2)であった。(「新型コロナウイルス感染症と闘う②」へつづく

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  • 岡田 晴恵
  • 2013.08.09