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新型コロナ禍でキャンセル続出の歯科医院~非常時に行くべきか否か~

【第3回】斎藤先生がこっそり教える 歯医者のホント~「歯科の駆け込み寺」~

歯医者にまつわる疑問や裏話を、歯科患者の「最後の駆け込み寺」として知られる斎藤正人歯科医師がこっそり教えます! 毎週金曜日更新!

■歯科医院にいくべき症状

 新型コロナウイルスが猛威を振るう状況を「戦時下」と評する斎藤正人歯科医師。この非常事態のもとでは、人混みの中に入っていくこと自体が大きなリスク要因になりうる。必要なとき以外は外出をなるべく控えるというのが、新型コロナからを身を守る最大の防御策になっている。

 

 アメリカ・ニューヨーク州では3月22日の夜から原則として、労働者は出勤停止、州民は可能な限り自宅待機という行政命令が出された。同国では他の州でも、事実上の外出禁止令が相次いで出されている。日本では、東京にロックダウンの可能性はあるが、そこまで厳しい措置はとられていないものの、やみくもに出かけるのは控えるべきだろう。

 

 そうした中で、いまどうしても行かなければならない場所はどこかと考えたとき、歯科の優先順位はだいぶ低くなってくる。すぐに命に直結するような分野ではないからだ。では、どういう場合に歯科医院に行くべきなのか。また、どういう場合なら診察を先延ばしてもかまわないのか。

「単純に言えば、痛い、染みる、グラグラする、穴が開いている、食べにくい……。そんなところでしょうが、今回のような戦時下で歯科医院に行って治療を受ける必要があるかとなると、『そうです、早く来てください』とは私にはとても言えない。ものすごい速度で症状が進行するならともかく、しばらくそのままにしても、それほど変わらないケースが少なくないからです」

 

 そもそも、大半の人は歯科医院は歯が痛くなったら行くものと考えている。戦時下であろうとなかろうと、はっきりした症状が出るまでは、歯のケアについて軽く考えている人が圧倒的に多いのだ。しかし、症状が悪化する前に治療したほうがベターであるのはいうまでもない。

 

 40歳をすぎたら特に注意しなければならないのが歯周病。成人の約8割が歯周病にかかっているというデータもある。痛みがまだ出ていなくても、歯に違和感があれば、気をつけなくてはならない。たとえば、朝起きたとき、口の中が粘つく感じがするのも、歯周病の症状のひとつ。歯ぐきから血が出る、以前より歯のすき間に食べ物がはさまりやすい、口臭が気になりだした……なども、歯周病のサインだ。これらが複合的に起きていれば、痛みやぐらつきがなくても、対策を考えるタイミングだと言えるだろう。

 

 こうした症状が出たとき、自分に合った歯科医師と出会えれば、適切な処置が受けられ、その後の重症化も防ぐことができる。だが、我慢できないほどの痛みでなければ、歯科医院に行こうとなかなか思わないのが現実。仮に行く必要があると感じたとしても、実際にどこの歯科医院に行けばいいのかわからない。費用もどれくらいかかるかわからない。そうして躊躇しているうちに時間だけがすぎて、歯周病が進行してしまうという結果を招くのだ。

「ここなら安心と思える歯医者がどれだけあるのか。この新型コロナ禍の中、多くの歯科医院で大量の予約キャンセルが出ている。患者さんの側が、歯医者の感染症対策には信用が置けないと思っているからこそ、起きた現象です。また、本当に必要だと思える治療をどれだけの歯医者がやっているのか。疑心暗鬼にならざるをえないというのが、キャンセルする患者さんの偽らざる心境なのでしょう」

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『歯医者のホントの話』 斎藤正人/田中幾太郎

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斎藤 正人

さいとう まさと

サイトウ歯科医院

院長

1953年東京都生まれ。神奈川歯科大学大学院卒。極力、歯を抜かずに残す治療を心がけ、「抜かない歯医者」を標榜する。一昨年9月『この歯医者がヤバい』(幻冬舎新書)を上梓。


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