「大和、操舵不能!」4人の士官の誰もが知らなかったその時、米軍第1次攻撃の真実【特攻まであと2日】 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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「大和、操舵不能!」4人の士官の誰もが知らなかったその時、米軍第1次攻撃の真実【特攻まであと2日】

戦艦「大和」轟沈 75年目の真実⑤


 太平洋戦争最大の謎となる「天一号作戦」「戦艦大和ノ最期」に迫る第5回。必死の対空防御も空しく、米軍機の攻撃は数分間続いた。追い詰められている大和においては命中報告も四人の士官によって見解が異なるのは当然のことだったのかもしれない。(原勝洋 編著『真相・戦艦大和ノ最期』第8章・写真『戦艦大和建造秘録』より引用)


■「大和」の左舷に魚雷が命中!次第に浸水が始まる

 第17雷撃機中隊の日本側対空砲火に対する評価は、激しくかつ正確であったと記録している。炸裂弾の中には、人間の頭大もある黒い小球体がぐるぐる回っているのが目撃され、たなびく煙のように浮かぶ燐の煙の吹流しも観測された。何人かの搭乗員はロケット弾を見たように思うとも報告していた。

 燐の煙の吹流しの炸裂は、三式焼霰弾の炸裂点を示すものである。三式焼霰弾の装着信管は、四式時限信管零型で全長(信管共)1・6メートル、完備重量1360キログラム、炸薬量8キログラム、焼夷弾子(数は996個、1個の寸法は25×70ミリメートル)と支栓504個の合計1500個であった。炸裂した場合の散開角度は15度、燃焼秒時8秒、被害半径220メートルである。そして、弾体炸裂による弾片数は2647個、焼夷剤成分の内訳は、多硫化系合成ゴム、生ゴム、ステアリン酸、硫黄、硝酸バリウム、エレクトロン屑、テルミットを含んでいた。放出状況は、長さ700メートルに及んだ。 こうして米軍第1波攻撃は終了した。

 米海軍技術調査団の報告書は、12時20分頃、第1次攻撃第1波の攻撃が開始され、数分間続いたと記録している。

 第1次攻撃が完了した時、「大和」は第三主砲塔付近に直撃弾4発を受けていた。 そしてさらに、左舷に2ないし3本の魚雷の命中があった。最初の傾斜は、左に5から6度であった。

 宮本鷹雄砲術参謀(配置第2艦橋、海面から眼高25・7メートルの高さ)は、米戦略爆撃調査団報告第133号の中で、爆弾3発のみの命中を報告しているが、他の3人の士官(森下参謀長、能村副長、清水副砲術長)の証言は、爆弾4発が直撃したことを示していた。

 爆弾2発は、最上甲板右側の第150番(肋材)付近に命中して、その箇所にあった12・7サンチ連装高角砲を破壊した。

 その直撃した2発は、最上甲板に直径5から7メートルの穴を開けて中甲板に達し、爆発したと報告された。複数の連装高角砲が破壊されたが、火災は発生しなかった。 損害報告に基づいて、清水副砲術長は爆弾2発を250キログラム通常爆弾と推定した。 他の爆弾2発は、最初の命中があってから、5分以内に炸裂した。

 爆弾の1発は、中心線上の後部副砲塔前方の少し左よりを直撃した。もう1発は、後部射撃指揮所を貫通し、そこを大破させた。

 これら直撃弾は最上甲板、上甲板を貫通して中甲板で炸裂し、火災を発生させた。

 この火災はある時には消えかけ、またある時はにわかに燃え上がったりして、「大和」が沈むまで消えることはなかった。実際には20数分間続いたのである。 後部2番副砲15・5サンチ三連装砲塔は、内部を破壊され、生存者はわずか数人の砲塔員だけだった。生き残った1等兵曹は、後に清水副砲術長にこの一帯の爆弾被害に関する多くの情報を与えることになる。

 消火活動の努力は混乱のため、効果がなかった。この火災は、その後の2次にわたる攻撃で転覆すると同時に起きた弾火薬庫の爆発原因になったのかもしれないと思われた。

 

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原勝洋

はらかつひろ

戦史研究家

1942年4月、静岡県生まれ。法政大学法学部卒業。

『高松宮日記』(中央公論社)の編集に関する調査に従事。

『文藝春秋』(昭和55年5月号)掲載の「暗号名ウルトラ 山本長官機を撃墜す」は、英訳され現在、米国国立公文書館Ⅱ所蔵の米軍極秘資料「Yamamoto shootdown」ファイルに収録されている。

『戦艦大和発見』辺見じゅんとの共著(ハルキ文庫)、『新装版・ドキュメント戦艦大和』吉田満との共著(文春文庫)の他、『零戦秘録』、『真相・カミカゼ特攻』、『暗号はこうして解読された』、『カラー写真で見る太平洋戦争』、『カラー写真で見る「原爆」秘録』、『真相・戦艦大和ノ最期』、『戦艦「大和」永遠なれ!』、『伝説の戦艦「大和」』(以上、KKベストセラーズ)などの編著がある。

 

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