■ペラペラな1枚の宝もの

この日、陽の周りには、たくさんの笑顔が溢(あふ)れていた。
そのなかには、もちろん私の笑顔もあった。

「はい、撮りますねー」と言ってシャッターを切る先生、

「陽ちゃん〜こっちだよ〜」と声を掛けてくれる看護士さんたち。

レンズに写るのは、陽と、夫と、私。

初めての家族写真。

小さな穴から、手袋をした手をいれ、そっと陽に触れる夫と私。
泣かずに、ゆっくり腕を動かしている陽。
色んな人に見られながらの撮影は、少し恥ずかしかったけれど、
なんとも言えない、幸せな気持ちで胸がいっぱいだった。

ペラペラな、薄い1枚の写真が、私たちの一生の宝ものとなった。
もっともっと、宝ものを増やしていこう。

そしてこの頃から、陽にある変化がみられた。
陽の赤い目、
その赤い目の下から、時々3ミリくらい、黒目らしきものが見えるようになってきた。
ちゃんと目玉がある。
圧迫されて、どれほど眼球に負担がかかっているかは、わからないけれど、ちゃんとある。
赤い目に見えるのは、かたい皮膚に引っ張られて、裂けて、瞼(まぶた)が裏返っているのが原因だった。

いつか、しっかりと目を開けて、
父ちゃんと、母ちゃんを、見てね。
いろんなものを、一緒に見ていこうね。

そう強く願った。(『産まれてすぐピエロと呼ばれた息子』より)