Scene.4 気分はいつもライブ。 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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Scene.4 気分はいつもライブ。

高円寺文庫センター物語④

「すいません、メンボ貼らせてくれますか?」

「え、なんのこと?」

「店長、バンドのメンバー募集の貼り紙ばい」

「あぁ、よかよ」と、また内山くんの佐世保弁がうつった。

「知らなくてメンボくない」って言ったら、ダジャレスルーかぁ~。

店に入って、すぐ眼につく雑誌の一等地は音楽雑誌。それも、ほとんどがロックの雑誌なので、狙ったとはいえバンドマンのお客さんは増えた!

外壁の入口右側は、いつの間にかメンボの貼り紙で覆いつくされてしまった。広くとった窓からは、ロングヘアや五指を広げきったトサカを頭に乗せたようなバンドマンが通り過ぎる。みんな背中にはギターケースを背負って歩く日常風景、街としても特異じゃないのかな?!

ライブハウスとバンドの練習スタジオが、とにかく多い。夜ともなれば、駅周辺にはストリート・ミュージシャンがあちこちで歌っているというのが高円寺。

「内山くん、いま人気のテレビ『いかすバンド天国』に出なよ」

「なんばい店長、あんなもんは問題にならんけんが」って小気味いいぜ、九州男児。

 

アタマの中には、THE KINKSの「Come Dancing」が流れる。

Scene.4 気分はいつもライブ。

 

「みんな、今日は午後にミーティング。本店から応援が来るから、4丁目カフェな」

「やった。猫丸じゃなくて?」

「うちらうるさいけんが、猫丸じゃ本読んでいる客に悪かよ」

手ごたえのある両腕スタッフだけど、いちいちめんどくさい・・・

「4丁目カフェ」は駅の反対側だけど、広くて開放的。いつも混雑しているから、声高にお喋りできるのがいい! それに、シェフはりえ蔵の友達だから気安いというのもいい。

「さてと、今日は月曜日でミーティングにしたけど。明日は内山くん、神田村で仕入を頼むな。明後日は、りえ蔵はボクと蔵前にグッズ探しに行ってみよう」

勝新太郎のビニール人形が売れた!

店のコンセプトを理解しているから、神田村での書籍仕入れは内山くんに任せた。次は利幅が大きく、儲けられるグッズの開拓を進めていきたいと思っていた。

書籍・雑誌の儲けは定価の22%ほどでしかないが、グッズは返品ができないリスクを負っても50%ほどの利益がある商品なので売れるモノを探すことにしたのだ。

「本と意味を絡めてのグッズだよ、雑貨屋じゃなくて本屋なんだからね」

新人の、まえちゃんにレジを任せて書棚の整理。

「さわっちょ、福音館の絵本は返品できないからね。帰り道に、吉祥寺の本屋の偵察を頼むよ」

「店長、ユザワヤで妖怪のフィギュアもですよね」

見透かされてバレバレ「ケケケ!」

「店長、この文庫を売りたいからPOP書いてもいい?」

「POP、POPってPOPもいいけど埋もれちゃうよ、ちょっと考えてごらんよ」

「店長!まえちゃんが固まっとる」

わ! 見れば、なんと森本レオさんを前に顔面蒼白じゃないか! 内山くん、フォロー、って指サイン。

店内に目を配りつつ、「さわっちょ、店内監視」「りえ蔵、まえちゃん後退」と、見事な連携プレー!

「まいどありがとうございます。領収書はいつものようにで、よろしいですか?」

いつものスタイル、カジュアルな服装に下駄でご来店のレオさん。なま声は、さらに染み渡るよねぇって「まえちゃん、どうしたの?!」

「はい、すいません。タレントさんが多いという注意は理解していたのに、大好きな森本レオさんがまさかの突然にだったもので・・・・・・」

後にも先にも、人が固まるって初めて見た。

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のがわ かずお

1951年 東京生まれ。書泉を経て、高円寺文庫センター店長。その後、出版社のアートン・ゴマブックス・亜紀書房顧問。本屋B&B、西日本出版社などにかかわる。 温泉とプラモデルと映画を、こよなく愛する妖怪マニア。共著『現代子育て考5.男の子育て』(現代書館)、『独断批評』(第三書館)。


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