「だんご3兄弟」から21年。平成の“3大”ヒット曲が歌われなくなった残念な事情<br />―『だんご3兄弟』『TSUNAMI』『世界に一つだけの花』― |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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「だんご3兄弟」から21年。平成の“3大”ヒット曲が歌われなくなった残念な事情
―『だんご3兄弟』『TSUNAMI』『世界に一つだけの花』―

数奇な運命をたどることになった平成の大ヒット曲たち

 そしてもうひとつ、いわくつきになった大ヒット曲がある。03年3月にシングル化され、現在では313万枚以上を売り上げている「世界に一つだけの花」(SMAP)だ。暮れの「紅白」でSMAPは大トリとしてこれを歌い、のちに音楽や道徳の教科書にも採用された。「TSUNAMI」や「だんご3兄弟」を抜き、堂々たる歴代3位、平成最高の座に君臨している。

 しかし、16年にSMAPが解散。再結成がない限り、CDもしくは過去映像などでしか聴けなくなった。さらに今年、作詞作曲者でセルフカバーもしていた槇原敬之が二度目の逮捕をされたことで、世間の好印象もかつてほどではない。

 とまあ、平成の3大ヒット曲はそろいもそろって残念な事情をともなうものとなってしまったわけだ。

 ただ、未曾有の大災害やオリジナルアーティストの解散といった事情に比べ「だんご3兄弟」の場合は速水個人がみそぎを済ますことで状況が好転した。被害者遺族が復帰を望んでくれたということもあり、事故から9ヶ月後には東日本大震災のチャリティイベントで活動を再開。16年からは、洗足学園音楽大学音楽学科声優アニメソングコースの講師も務めている。

 19年8月には「おかあさんといっしょ」で速水・茂森による「だんご3兄弟」が久々に放送され、11月には番組の60周年コンサートにこのコンビが登場した。また、この年の4月には「ミュージックステーション」(テレビ朝日系)で、Little Glee Monsterによるカバーが披露されたりもした。

 さらに今年2月、速水はテレビのトーク番組への出演を果たした。「Anison Days」(BSイレブン)である。「だんご3兄弟」が大ヒットした驚きについて「初日でミリオンとか、そんな感じになっちゃって」などと振り返ったり、音大の講師としてアニメ「タッチ」の同名主題歌を課題曲にしている理由を語ったりした。

「リズミカルに歌わなきゃいけないんだけれども、歌詞のなかにせつない思いがあったり、シンコペーションとか音の急な高低差とか、いろんな要素がこの曲にはある気がして、練習にはすごくいいかなって」

 この指摘自体には感心させられつつも「タッチ」といえば、主要人物のひとりが交通事故で死ぬんだよな、ということが頭をよぎったり。速水本人がいい意味で吹っ切れた雰囲気だっただけに、こちらも早く忘れてあげなきゃと思ったものだ。

 なお、茂森のその後はというと、02年にフジテレビ社員と結婚。3児の母となっている。夫は「めちゃ2イケてるッ!」などを手がけた実力者だ。奇しくも速水が事故を起こす数日前には「FNS27時間テレビ」でめちゃイケメンバーによる「だんご3兄弟」のパロディが行なわれていた。

 また、夫の弟は出版社社員で、じつは筆者の知人でもある。茂森との交際中「このままお兄さんが結婚したら、あゆみおねえさんと呼ぶんですか」などとからかわせてもらったことが懐かしい。

 それはさておき、どれも数奇な運命をたどることになった平成の3大ヒット曲。配信システムの広まりなど、音楽の楽しみ方がますます多様化した令和の世に、CDセールスでこれらを超えるヒット曲が生まれることはなさそうだ。そのあたりにも、一抹の淋しさを禁じえない。

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『痩せ姫 生きづらさの果てに』
エフ=宝泉薫  (著)

 

女性が「細さ」にこだわる本当の理由とは?

人類の進化のスピードより、ずっと速く進んでしまう時代に命がけで追いすがる「未来のイヴ」たちの記憶
————中野信子(脳科学者・医学博士)推薦

瘦せることがすべて、そんな生き方もあっていい。居場所なき少数派のためのサンクチュアリがここにある。
健康至上主義的現代の奇書にして、食と性が大混乱をきたした新たな時代のバイブル。

摂食障害。この病気はときに「緩慢なる自殺」だともいわれます。それはたしかに、ひとつの傾向を言い当てているでしょう。食事を制限したり、排出したりして、どんどん瘦せていく、あるいは、瘦せすぎで居続けようとする場合はもとより、たとえ瘦せていなくても、嘔吐や下剤への依存がひどい場合などは、自ら死に近づこうとしているように見えてもおかしくはありません。しかし、こんな見方もできます。

瘦せ姫は「死なない」ために、病んでいるのではないかと。今すぐにでも死んでしまいたいほど、つらい状況のなかで、なんとか生き延びるために「瘦せること」を選んでいる、というところもあると思うのです。
(「まえがき」より)

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宝泉 薫

ほうせん かおる

1964年生まれ。主にテレビ・音楽、ダイエット・メンタルヘルスについて執筆。1995年に『ドキュメント摂食障害―明日の私を見つめて』(時事通信社・加藤秀樹名義)を出版する。2016年には『痩せ姫 生きづらさの果てに』(KKベストセラーズ)が話題に。近刊に『あのアイドルがなぜヌードに』(文春ムック)『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)、最新刊に『平成の死 追悼は生きる糧』(KKベストセラーズ)がある。ツイッターは、@fuji507で更新中。 


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痩せ姫 生きづらさの果てに
  • エフ=宝泉薫
  • 2016.08.26