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【緊急特報】コロナウイルスで「キッズライン」や「ナビタス」など微妙業者が「便乗商法」花盛り問題

山本一郎【連載】「コップの中の百年戦争 ―世の中の不条理やカラクリの根源とは―」第3回

 コロナウイルスのような大きな問題が起きて社会がパニックになると、なぜか「コロナウイルスが27度のお湯で死滅」とか「マスクの原料となるトイレットペーパーが不足」などのガセネタが乱舞するのは世の常であります。オイルショックかよ、と思います。中には、コロナウイルス対策で国民がパニック状態になっていることに便乗して、不安や不便につけこむ事業者が出てきました。メルカリを見るとトイレットペーパーやマスクを高値で転売しようとする奴らが現れたり、各業界では政府を打つ対策に便乗したり、検査体制の不備をマスコミで煽って自分のところのクリニックで微妙に法外な値段の電話相談をおっぱじめたりして、追い込み漁かよと思います。今回はそんなドサクサ紛れで暴利を貪る輩についてみなさんと考えたいと思います。

「キッズライン社」社長の経沢香保子さん/写真:朝日新聞フォトアーカイブ

◆学校休校でシッター需要増加を見越して低品質そうなシッターを仲介するケース

 ウイルス蔓延で学校を全校休校にしてみたものの、子どもは元気いっぱいですから「お前ら通勤せずに家で働け」と言っても家で子どもが騒いでいるのに自宅で働けるはずがありません。これじゃまずいってことで、政府もいろいろと対策を打っているところなのですが、なぜかベビーシッター代金を一部肩代わりするよという話が出てきました。共働きの家庭からすれば、子どもが家にいたら仕事にならないのは当然なので、誰かに子供の面倒を見てもらわなければなりませんが、でも結局満員電車に乗って働きに出たら感染リスクは変わらないんじゃないかと誰も言わなかったのでしょうか。

 そこへ、なぜか「キッズライン社」というベビーシッター派遣の会社が前に出てきて内閣府からの助成が出ましたと宣伝し始めたんですよね。助成自体は元からあるものですが、今回は3月に限り上限を5万円から大幅に増やしますよ、という施策です。全国保育サービス協会では、この決定について助成が受けられるサービス業者の一覧が出ていますが、キッズライン社が広報する筋合いのものではないんですよね。なのに、なぜかPR TIMES含めてプレスリリースを大量に出して宣伝していて、頑張って便乗している姿が美しいです。

新型ウイルス 3月にかぎりベビーシッター利用の助成を増額 | NHKニュース   https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200301/k10012308121000.html
割引券承認事業主一覧 [令和元年度版]
http://www.acsa.jp/htm/babysitter/approvai_proprietor_list.htm
内閣府がコロナ対策で緊急ベビーシッター補助決定 3月月額最大26万4000円- キッズライン https://kidsline.me/contents/news_detail/532

 このキッズライン社、従来は六本木の本社で説明会後に面接を経てシッター登録をする流れでした。しかし、それも面倒だという話なのか、最近では「自宅でかんたん登録」という社員が一度も会ったことのない人でもベビーシッターに登録できる結構怖い仕組みが登場しました。いや、登録や研修ぐらいしっかりやってもらわないと、ベビーシッターのように大事な子どもを預ける仕事として大丈夫なのかと保育士業界で物議を醸しています。経沢香保子さんという経営者は優秀なのかもしれませんが、なぜこのような場面で雑な経営をしてしまうのか理解できません。

 で、この「自宅でかんたん登録」は、動画面接をご自宅で受講していただける24時間対応の簡単登録であると説明されておりました。それが、今回のコロナウイルス騒動で危ないからという理由で説明会そのものをやめ、ベビーシッター希望者全員が「オンライン登録」になりました。大丈夫なのでしょうか。会ったこともない人をオンラインでベビーシッターとして「仲介」するんですよ……。

 この一世一代の稼ぐチャンスに乗って、多くのベビーシッターさんを片っ端から採用したいのもあるんでしょうが、オンライン登録できちんとフィルター機能があるのか大いに謎です。

 社員も会ったことのないベビーシッターさんが家に来る可能性があります。さらに、事件や事故が起こった時にも損保会社が弁済してくれる契約があるだけでキッズライン社は一切責任を持たないスタンスであり、あくまで「仲介」という立場を貫いています。 

 だからこそ、会ったことのない人でも「自宅でかんたん登録」でベビーシッターにでき、キッズライン社がベビーシッターの質をさして保証しないのに利用者の親御さんに仲介してしまう事業が成立してしまうのです。これが「請負」や「派遣」であれば、事業者が責任もってシッターを教育し、品質の保証をし、万が一でも企業自体が対応するのに対し、あくまで「仲介」であるキッズライン社はマッチングが良くなかった責任までは負ってくれません。https://kidsline.me/help/contract_usage

 実際にキッズライン社のベビーシッターを頼んでみたら家財や本を破損汚損され、保護者が保険での補償を申請したところ「ご自身で気をつけてください、ご自身でベビーシッターさんに注意してください」と言われたケースもあるようです。家にいないからベビーシッターを頼んでいるのに、その保護者が破損を弁償して欲しいと言っても「キッズライン社はあくまで仲介だから、トラブルは利用者・保護者の自己責任です」と言われるのは果たして社会的責任を果たしていると言えるのでしょうか。

 キッズライン社にもきちんとしたベビーシッターさんも多く登録しており、すべてが「ハズレ」というわけではありません。トレーナー制度も存在はします。しかし、派遣するベビーシッターさんの品質にコミットしない「仲介」の仕組みである以上、内閣府がベビーシッターに補助を増額しましたという話を検討する際にはよくベビーシッターの事業者を選んだほうが良いのではないかと思います。 

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