■想いと努力で社会や国を動かせる

亀)── 「悩んでいる人に寄り添う」って、言葉にするのは簡単ですけど、実行するのは難しいですよね…ん?(目の前にあった商品を手に取り) このシャンプーも作ってるんですか?

津)──このシャンプーは医薬部外品といって、有効性を謳える薬用シャンプーなんです。薄毛を治療するわけではありませんが、髪が生えやすい環境を作ってあげられます。他には、髪にダメージを与える静電気を取り除くことができるドライヤーも手掛けています。

亀)──なるほど「トータルヘアケア」ってこういうことなんですね。もう全部ですね。ウィッグもつくるし、薄毛の予防はするし、髪のダメージまで考えるって…。

津)──時代に合わせて様々な声やニーズが存在します。それに応えようと、もうなんでもやっていますね。

亀)──優しい会社なんですね。なんというか、人の悩みに手を差し伸べる会社。それに、当たり前かもしれませんが、めちゃくちゃ努力してますね。

津)──ありがとうございます。一般的には「アデランス=カツラメーカー」というイメージがあるかもしれませんが、髪に悩む人の心理的な負担やストレスを減らしてあげたい。これが私たちの社会的な存在意義なんです。

亀)──いろんな人、いろんな悩みやストレスがありますもんね。

津)──そうなんです。創業当初は男性の薄毛問題を解決したいという想いだったのですが、小さな子どもの円形脱毛症や、抗がん剤の副作用による脱毛に悩む方の問い合わせが増えてきたのです。それから「愛のチャリティ」という取り組みを40年間ほどやっています。子どもたちに無償でオーダーメイドウィッグをプレゼントしているんですよ。年間で300人強くらいですね。

亀)──それは素晴らしい取り組みですね! 男性の薄毛だけでなく、子どもや病気の人の声に応えたわけですか。懐が深いですね。

津)──病気のためにウィッグをお使いになる方がたくさんいるのですが、どうしても費用の問題があります。『保険適用にできないか』という問い合わせが多くあったのです。

亀)──ウィッグを使いたくても、お金の問題は無視できないですね。そこで社長はどうされたのでしょうか?

津)──会社全体、もちろん私も業界を含めて色々なところに働きかけました。そして2015年に「医療用ウィッグ」がJIS規格として正式に国に認められたのです。

亀)──アデランスが国を動かした!

津)──ウィッグはファッションとしてではなく、かなり深刻な症状の方も使っています。先程もお話しましたが、どうして「ヅラ」という言葉を使ってほしくないかと言うと、そういう人たちを傷つける言葉だからです。「ヅラ」といって笑いをとる行動を見て、ウィッグを使っている子どもたち、それに病気やケガなどで毛髪を失った人々が傷つくわけです。

亀)──いままで自分もそこまで考えていなかったです。

津)──ほとんどの方がそうだと思いますよ。だから、そういう日本の文化を変えなければならないと思っています。「ヅラがどうだ、ハゲがどうだ」なんて、人を傷つける言葉はもう無くさなければいけない。そういう人のことを考えた社会にしなければいけないという想いです。

亀)──ビジネスとしてだけではなく、理念というか想いが圧倒的すぎてコメントできないですね。やはり業界トップは心意気が違うし、とてつもない努力をされている。

津)──いつの時代も努力を惜しまず良いものを作り続けることが大事だと思います。それでも会社が傾いた時期もあったんですよ。

亀)──え? アデランスにもそんな時期があったんですか?

津)──海外からのファンドが入って、一時は会社名を変えたり希望退職を募ったりしたこともありました。そこで、商品開発や社員教育を強化して再建をはかったんですよ。その甲斐あって昨年は過去最高売上を達成することができました。

亀)──てっきり順風満帆な企業だと思っていました。でも、一度落ちても上にいくのは本物の証ですね。

津)──いえいえ。でも、今の状態で立ち止まろうとは思っていませんよ。今は19の国と地域で事業を行っていますけど、今後はさらに広げていくつもりです。

亀)──そのために「カツラ」という呼び方は封印ですね! 今日は濃いお話をありがとうございました!

津)──こちらこそ、ありがとうございました。亀田さんも今日から「ウィッグ」でお願いしますね。


─────(取材後)お疲れさまでした。取材を終えて、いかがでしたか?

亀)───いや、すごかったですわ。圧倒的な世界チャンピオンのこだわりを見たというか。毛髪で悩んでいる人に対する「想い」がとにかく強い。自分も知らなかったですけど、もう「カツラ」なんて気軽に言えなくなりましたね。みなさん、いいですか? 今日からは「ウィッグ」ですよ!