槇原敬之逮捕で考える<クスリ事件言い訳集>―長渕は不倫込み、ASKA、尾崎は? |BEST TiMES(ベストタイムズ)

BEST TiMES(ベストタイムズ) | KKベストセラーズ

槇原敬之逮捕で考える<クスリ事件言い訳集>―長渕は不倫込み、ASKA、尾崎は?

逮捕の言い訳は再スタートを切るための最初の自己表現!?

 かと思えば、美川憲一のように復活後の自分を正当化するために活用している人もいる。二度捕まったあと、豪華衣裳をウリにして「紅白」の常連に返り咲いたが、こんな発言をしてみせた。

「私はお客様に夢を売る商売でしょ。だけど、あるとき、現実での醜い部分を見せちゃったのね。だから、そのハンデを取り返すためにも、ぜいたくで華やかで夢のある私を見せたいの」

 たしかに、同じくスネに傷を持つ人にとっては夢のような復活かもしれない。

 また、謝罪のために、生涯唯一の歌番組出演をしたのが尾崎豊だ。生放送の「夜のヒットスタジオ』に登場して、

「ご心配をおかけしました。僕の素直な気持ちを曲にして、これからずっと歌っていきたいと思っています」

 と、あいさつ。拘置所の中で作ったという「太陽の破片」を歌った。「昨晩(ゆうべ)眠れずに」とか「欲望と戦った」といったフレーズが出て来る内省的バラードだ。ただし、彼はその4年後、急逝、死因は覚醒剤中毒が有力視されている。

 そんな尾崎のトリビュートアルバムで「太陽の破片」をカバーしたのが、岡村靖幸である。それ以前に一度、それ以降に二度逮捕され、三度目のときには公判でこう語った。

「本当は出所後にカウンセリングを受け、完治した後に仕事をするべきでしたが、待っているファンの期待に応えたいという一心で仕事を始めてしまいました。活動再開後もインターネットでファンの批判の声を見るなどし、期待通りの活動ができていないことに悩むこともあり、また不眠不休で働いていたこともあり、プレッシャーに負けて覚醒剤に手を出してしまいました」

 そして「自分の今の気持ちを詩にしました」として、それを読み上げた。

「裸足で氷の上を歩くようにしかコミュニケーションを取れない僕 裸足で氷の上を歩くようにしか人を愛せない僕 なぜだろう 皆はすらすらっとプロスケーターのように滑るのに 僕はすってんころりん(略)時代とうまくやっていけない 友達とうまくやっていけない というか友達がいない 生きていていいのだろうか 今まで人にホントのことを話したことがない ホントの僕は君と川を泳ぎたい 真夜中に泳ぎたい 裸で泳ぎたい」

 傍聴人がブログに聞き書きしていたのを引用抜粋したものなので、表記など正確ではないかもしれない。が、クスリに走る人の切実な苦渋は伝わってくる。ここから約12年、岡村が逮捕されていないのは、こういう詩で自分の思いをさらけ出したこともプラスに働いたのだろうか。

 話を槇原に戻すと、かなりの確率で彼はいずれコメントをするだろう。ただ、再犯とあって、前回と同じような内容では、誰より本人が納得しないはずだ。Jポップ有数の詩人でもある彼がどんなことを言うのか、期待したいと思う。多くのミュージシャンにとって、逮捕の言い訳は再スタートを切るための最初の自己表現なのだから。

KEYWORDS:

『痩せ姫 生きづらさの果てに』
エフ=宝泉薫  (著)

 

女性が「細さ」にこだわる本当の理由とは?

人類の進化のスピードより、ずっと速く進んでしまう時代に命がけで追いすがる「未来のイヴ」たちの記憶
————中野信子(脳科学者・医学博士)推薦

瘦せることがすべて、そんな生き方もあっていい。居場所なき少数派のためのサンクチュアリがここにある。
健康至上主義的現代の奇書にして、食と性が大混乱をきたした新たな時代のバイブル。

摂食障害。この病気はときに「緩慢なる自殺」だともいわれます。それはたしかに、ひとつの傾向を言い当てているでしょう。食事を制限したり、排出したりして、どんどん瘦せていく、あるいは、瘦せすぎで居続けようとする場合はもとより、たとえ瘦せていなくても、嘔吐や下剤への依存がひどい場合などは、自ら死に近づこうとしているように見えてもおかしくはありません。しかし、こんな見方もできます。

瘦せ姫は「死なない」ために、病んでいるのではないかと。今すぐにでも死んでしまいたいほど、つらい状況のなかで、なんとか生き延びるために「瘦せること」を選んでいる、というところもあると思うのです。
(「まえがき」より)

オススメ記事

宝泉 薫

ほうせん かおる

1964年生まれ。主にテレビ・音楽、ダイエット・メンタルヘルスについて執筆。1995年に『ドキュメント摂食障害―明日の私を見つめて』(時事通信社・加藤秀樹名義)を出版する。2016年には『痩せ姫 生きづらさの果てに』(KKベストセラーズ)が話題に。近刊に『あのアイドルがなぜヌードに』(文春ムック)『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)、最新刊に『平成の死 追悼は生きる糧』(KKベストセラーズ)がある。ツイッターは、@fuji507で更新中。 


この著者の記事一覧

RELATED BOOKS -関連書籍-

痩せ姫 生きづらさの果てに
痩せ姫 生きづらさの果てに
  • エフ=宝泉薫
  • 2016.08.26