Scene.3 面白すぎる、人々が。 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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Scene.3 面白すぎる、人々が。

高円寺文庫センター物語③

店のすぐそばに、焼き鳥屋の「大将」がある。

いまだに続く、毎月の恒例になった「ゲゲゲの呑み会」発祥の地なのだ。とにかく安い!

バイトくんたちも、他の本屋さんや出版社の営業さんに編集さんと一緒に飲みたいというので始まった。これまでは誘われるままに飲んでいたので、財布に厳しいからと給料日後の月末金曜日に大将にいるからおいでねと。

店内にはライオンなど、アフリカの動物の写真がパネルで飾られていた。大将のママさんがアフリカ好きで、旅行で撮った写真を文庫センターのプリントサービスに持ってくるからお馴染みなのだ。

「大将で飲んでいるからね!」文庫センターに出入りする方々に声をかけて、数人で始まった飲み会も10数人に膨れ上がる。屋根はトタンなのか、大雨の日は雨音が煩くて話し声が聴こえやしない「え! なんて言ったの?!」

ここでの出会いもさまざまで、水面下のお付き合いから結婚したカップルもいたそうな。

業界関係の情報交換のみならず、突然「仕事を辞めちゃったので、なんか仕事先ないですか」ということは度々、その場で転職先が見つかったなんてこともあった。

この「ゲゲゲの呑み会」、場所は神保町に移っていまだに続いている!

 

「店長、ニコチン補給どうね」と、いつものように内山くんと店の外での喫煙タイム。

「よかねぇ、寒いけんが一服旨かぁ」

「店長、初めての年越しなんよねぇ~ここで」

「うん、今年はよかよぉ! 売り上げも開店から好調ばい。しかも、ボクの誕生日にはジャイアンツが大逆転優勝の日本一になっとるけん!」

「それ言わんと! こっちゃ、バッファローズのキャップ被っとるのによぉ言うわぁ。野茂もぉ、ドジャースを辞めて戻らんかって思うよ」

「日本人メジャーリーガーで初のホームランも打ったんだしな、トミー・ジョン手術を受けたのはヤバかね」

「実はお願いがあるんよ」

「なんばい、いきなり野暮天な。と言えば昨日のテレビ『イカ天』すごかねぇ~たまが5週勝ち抜いて、グランドイカ天キングになったの知っちょるの!」

内山くんのライブ♪

「金曜がバン練やから、土曜はたいてい飲んどるもん知らん」

この年2月に始まったテレビ番組「三宅裕司のいかすバンド天国」は、バンドブームを加速させていたので出場をススメてもNO!

ブームにノリャいいのに内山くん、意固地なのも九州男児なのかなぁ・・・

 

「殿!あの貼り紙の中から、ビートルズは生まれるのかしら?」

「だといいよねぇ、ママさん。貼り紙だらけの壁がベルリンじゃなくて、キャバーンクラブみたいになってったら最高!」

「殿!お店にロックな兄ちゃんたちが入っていったわよ」

 
 

 

 

 

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のがわ かずお

1951年 東京生まれ。書泉を経て、高円寺文庫センター店長。その後、出版社のアートン・ゴマブックス・亜紀書房顧問。本屋B&B、西日本出版社などにかかわる。 温泉とプラモデルと映画を、こよなく愛する妖怪マニア。共著『現代子育て考5.男の子育て』(現代書館)、『独断批評』(第三書館)。


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