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「GIGAスクール構想」実現のために考えたい「いじめとタブレット」問題

第96回 学校と教員に何が起こっているのか -教育現場の働き方改革を追う-


 先日の痛ましい小学6年生女子児童のいじめ問題がICT端末の利活用にも及んでいる。この事件から我々が学ぶべきこと、対応すべきことは何なのだろうか。GIGAスクール構想の推進という観点のみならず、改めて真摯に向き合っていかなければならないだろう。


■ICT端末の普及にともなう検討事例

 規則が増えて、それを守らせるためのエネルギーが必要になる。その繰り返しでいいのだろうか。
 今月14日、東京町田市の小学6年生の女子児童が、同級生からいじめを受けたとする遺書を残して昨年11月に自殺した件で、文科省は市や都の教育委員会の担当者を呼び、事実確認を行った。13日に、自殺した女子児童の両親と代理人の弁護士が、学校や教育委員会の対応が不適切だとして、文科省に公正・中立な調査を要望したためだ。

 文科省による事実確認に先立って、萩生田光一文科相は14日午前の記者会見で、「本件については、児童に配布されたICT端末がいじめに用いられていたとの報道がありますが、文部科学省においては、1人1台端末の本格運用に際し、他人を傷つけることを書き込まないなどの留意事項を整理したチェックリストなどを示しているところ、当時、適切な対応が取られていたか、町田市教育委員会等に事実確認などを行う必要があると考えています」と述べている。
 
 9月13日付の『東京新聞』(Web版)は、「東京・町田の小6女児が自殺、同級生からのいじめ示すメモ 遺族『学校のタブレット温床に』というタイトルの記事を載せている。
 同記事によれば、女子児童の死後、両親は同級生ら約30人から聞き取りを行い、いじめは4年生のころに始まり、計4人がいじめに関与していたことを突き止めている。聞き取りのなかで、女子児童が仲間はずれにされ、「死ね」と言われていたことも明らかにされている。
 そして、学校から貸与されているタブレット端末のチャット機能で、女子児童の名前をあげて「うざい」とか「お願いだから死んで」などのやりとりがあり、それを女子児童も端末上で目にしていたという。

 15日付の『東京新聞』(Web版)は、「いじめとタブレット端末の関連が、文科省の都教委、町田市教委への聞き取りで初めて明らかになった」と報じている。女子児童の両親は学校側に端末のチャット履歴について開示を求めていたが、学校側は「履歴は見当たらない」と回答していた。しかし14日の文科省の聞き取りで、タブレット端末がいじめに用いられていたことが明らかになったのだ。

 これについて萩生田文科相も記者会見で、いじめの一部が端末の端末のチャット機能を使って行われていたと説明している。そして、「現実として学校現場での、こういったパソコン、タブレットを通じていじめが起きていたことは極めて残念な事実であり、事実関係を確認して全国の自治体に周知することがあればしっかりやっていきたい」との姿勢を示した。
 ここで首を傾げたくなるのは、問題の焦点が「タブレット端末がいじめの温床になっている」ということである。萩生田文科相の発言は、「端末がいじめに使われないように周知する」とも受け取れる。

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前屋 毅

まえや つよし

フリージャーナリスト。1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。『週刊ポスト』記者などを経てフリーに。教育問題と経済問題をテーマにしている。最新刊は『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、その他に『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『グローバルスタンダードという妖怪』『日本の小さな大企業』などがある。


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