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国民の「勧善懲悪への飢え」を政府は“時々”は満たすべきだ【藤森かよこ】

ポリコレではなく普通のまっとうさを国民は求めている

旭川市女子中学生暴行脅迫凍死事件

 

 現在、SNSYouTubeやテレビのワイドショーなどで炎上している「勧善懲悪がなされないことへの怒り」は、旭川市の「女子中学生いじめ凍死事件」なるものに向けられている。いい加減、障害暴行などを「いじめ」と呼ぶのは、やめるべきだ。

 亡くなった女子中学生は2019年から上級生たちからの暴行脅迫に苦しみ、20212月に行方不明になり、3月に凍死体で発見された。警察は自殺だと断じたが、真実はわからない。

 818日に亡くなった女子中学生の遺族が弁護士団を通じて手記を全文公開した。被害者の女子中学生の名も顔写真もいっぱい公開された。

 その手記の中では、「いじめ」と呼ばれる暴行脅迫に苦しんでいた被害者の母親の相談を軽視し、心無い応対をした中学の(当時の)校長や教頭や担任教師の発言も明らかにされていた。実に冷酷な発言であった。(※「真実を明らかに」旭川女子中学生いじめ問題 遺族の手記全文(STVニュース北海道) – Yahoo!ニュース)

 この事件については、20213月に女子中学生の凍死死体が発見されて以来『文春オンライン』が粘り強い取材を重ねてきた。彼女は、上級生たちから暴行脅迫され、猥褻写真を撮影された。その写真は加害者たちによってLineで拡散されていた。明らかな性犯罪である。(※「娘の遺体は凍っていた」14歳少女がマイナス17℃の旭川で凍死 背景に上級生の凄惨イジメ《母親が涙の告白》 | 文春オンライン (bunshun.jp))

  SNSでは、彼女が通学していた旭川市内の中学校の場所や電話番号だけではなく、元校長や現教頭や担任教員の勤務先や名前や顔写真もさらされている。彼女に暴行脅迫していたとされる加害者たちの名前や顔写真も、通っている高校名や働いている場所などもさらされている。元校長や現教頭への怒りは特に大きく、彼らの自宅の住所や電話番号もさらされている。

 SNSで、教師や加害者に怒りを表現している人々の中には、小学生や中学生の頃にいじめられたが教師に適切に対処してもらえなかった経験をした人々も多く混じっているに違いない。また、勤務先などで悪質な嫌がらせを受けているが責任ある立場の人間から見て見ぬふりをされている人々も少なくないに違いない。

 亡くなった女子中学生の死体検案書に、実際には彼女がかかっていない統合失調症という病名が記入されていたことも論議を呼んでいる。彼女が「自殺」したという(今までのところの)結論に信憑性を故意にもたせているとして、加害者の関係者に「上級国民」がいて事実の隠蔽をしているのではないかという陰謀説まで出ている。(※【旭川女子中学生いじめ】中2女子の死体検案書に実際はかかっていなかった精神疾患名が記入!「加害者側に道警関係者や道警の家族がいたんだろうな」 – ろいアンテナ (comedydouga.com))

 この旭川の事件について「第三者調査委員会」の報告が待たれるが、この報告に学校側や加害者を糾弾する要素が含まれないと、SNSはさらに騒ぐだろう。

 みな勧善懲悪に飢えている。とはいえ、みなわかっているのだ。現行の日本の教育環境においては、児童や生徒のことに関心のない教師の方が無難に生きることができることは。児童や生徒を気遣える教師は疲弊して傷つき職場の中でも浮き教育現場から離れがちなことは。

 また、みなわかっている。人口の少なくとも3分の1ぐらいの親は、まともな子育てができないことは。寄ってたかって学友を暴行脅迫できる亜人間を育ててしまう親がいるということは。

 加害者の親たちは悪気から子育ての手を抜いたわけではない。そもそも育児能力がない。行き当たりばったりで子どもを作ったのであり、自分たちだってまともに躾けられなかったのだから、子どもの躾けができるわけない。自分なりの子育て哲学があるわけではない。できれば学校に子どもを丸投げしておきたい。身勝手なクレームをつけても学校は自分たちに抵抗はしてこないから都合がいい。

 みな、今の日本はその程度のものだとわかってはいる。わかってはいるが、みな勧善懲悪の実現を見たい。でないとこの世界に対して残っているわずかな信頼さえ壊されるから。

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藤森 かよこ

ふじもり かよこ

1953年愛知県名古屋市生まれ。南山大学大学院文学研究科英米文学専攻博士課 程満期退学。福山市立大学名誉教授で元桃山学院大学教授。元祖リバータリアン(超個人主義的自由主義)である、アメリカの国民的作家であり思想家のアイン・ランド研究の第一人者。アイン・ランドの大ベストセラー『水源』、『利己主義という気概』を翻訳刊行した。物事や現象の本質、または人間性の本質を鋭く突き、「孤独な人間がそれでも生きていくこと」への愛にあふれた直言が人気を呼んでいる。  

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