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おいしく飲んでいる水道の水、実は労働側は深刻な人手不足って知っていましたか?

日本の水が危ない⑩

 厚生労働省は2009年、「水道事業におけるアセットマネジメント(資産管理)に関する手引き」を作成し、水道事業者に設備の更新需要と財政収支の見通しを試算するよう促した。ところが、このアセットマネジメントの実施率を自治体の規模別に比べると、2016年段階で50万人以上の都市では100%だったものの、人口規模が小さくなるにつれその割合は低下し、5万人未満の自治体では62・1%にとどまった。同じ年の調査で、台帳を整備して水道施設のデータを整理することさえできていない事業者が約39%にのぼることも判明したが、その多くはやはり小規模の自治体とみられる。

 このように人員が十分ではないことによって現状の把握さえできなければ、変化に順応するための対応も難しくなる。言い換えると、余裕がないために、これまでの業務を継続することで精いっぱいになりやすい。

 実際、2017年に厚生労働省が総務省とともに調査したところでは、料金改定の必要性を定期的に検証していない水道事業者は全体の64%を占めたが、これもやはり規模によって差があり、50万人以上100万人未満の都市では18・2%、100万人以上の都市では18・8%だったのに対して、1万人以上2万人未満の規模の自治体では69・4%、5000人以上1万人未満の自治体では66・4%にのぼった。社会環境が変化するなか、水道料金の見直しは避けられないが、小規模な自治体ではそのための検証すらできない状況がうかがえる。

 

 また、同じ調査では水道事業にかかわる収支の見通しの作成状況も調べら
れたが、これを実施していない割合は、50万人以上100万人未満、100万人以上のそれぞれの都市で0%だったのに対して、1万人以上2万人未満の自治体では39・5%、5000人以上1万人未満の自治体では44・1%にのぼった。ここから、人手不足が深刻な小規模事業者は、現状の把握だけでなく、将来の見通しすら立てにくい状況にあるといえるだろう。

KEYWORDS:

『日本の「水」が危ない』
著者:六辻彰二

 

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 昨年12月に水道事業を民営化する「水道法改正案」が成立した。
 ところが、すでに、世界各国では水道事業を民営化し、水道水が安全に飲めなくなったり、水道料金の高騰が問題になり、再び公営化に戻す潮流となっているのも事実。

 なのになぜ、逆流する法改正が行われるのか。
 水道事業民営化後に起こった世界各国の事例から、日本が水道法改正する真意、さらにその後、待ち受ける日本の水に起こることをシミュレート。

 

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六辻彰二

むつじしょうじ

国際政治学者

1972年生まれ。博士(国際関係)。国際政治、アフリカ研究を中心に、学問領域横断的な研究を展開。横浜市立大学、明治学院大学、拓殖大学などで教鞭をとる。著書、共著の他に論文多数。政治哲学を扱ったファンタジー小説『佐門准教授と12人の政治哲学者―ソロモンの悪魔が仕組んだ政治哲学ゼミ』(iOS向けアプリ/Kindle)で新境地を開拓。Yahoo! ニュース「個人」オーサー。NEWSWEEK日本版コラムニスト。


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