日本全国に数多ある名字に高校生の時から興味を持ち、研究を始めた高信幸男さん。自身が全国を行脚し出会ってきた珍名とそれにまつわるエピソードを紹介する。
 

 2019年10月22日は、時代が平成から令和に変わったため天皇の即位の礼(正殿の儀)が執り行われる。即位の礼とは、即位した天皇が国内外に即位を宣言する儀式であり、古来より行われてきた儀式である。正殿の儀では、天皇・皇后両陛下がそれぞれ高御座(たかみくら)と御帳台(みちょうだい)に登り、そこで天皇陛下が「おことば」を述べられる。

 実は、天皇や皇族には名字がない。天皇にも「天皇(てんのう)」という名字があっても良いのではと思われるが、元々、氏は天皇が一族を統治支配するために下賜したものであったと思われ、天皇自身には必要のないものである。その後、戦国時代になり武士が自由に名字を名乗れるようになっても、誰一人として「天皇(てんのう)」という名字を名乗ろうとはしなかった。

 唯一、皇(すめらぎ)という名字が存在している。「皇」は寺の山号より生まれたとされるが、元々聖徳太子に何らかの関係があったようだ。いずれにしても、恐れ多くて「天皇」までは名乗れなかったのだろう。

 歴史の中には、天皇からお礼や恩賞として賜ったという名字も数多くある。たとえば、「栗花落(つゆり)」や「王身代(おうしんだい)」などがある。「王身代」という名字は島根県にあるが、由来は、後醍醐天皇にある。

 後醍醐天皇が隠岐の島に流され、島を脱出する際に、糟谷長政という武将が天皇の身代わりになり島に残ったことから、その功(王の身代わり)として「王身代」という名字を賜ったと伝えられている。