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親と一緒に暮らせないという現実。児童養護施設で暮らす子どもたち

児童養護施設で暮らす子どもたちの現実

■児童養護施設とはどんなところか

 この章では、「児童養護施設」と呼ばれる福祉施設で暮らしている子どもたちが実際にどのような生活をしていて、家庭で育つ場合とどこが違うのかをご紹介します。また、それによって生じる問題と、今後どういう方向に進んでいくべきかについても考察していきます。

 児童福祉法第41条によれば、「児童養護施設は、保護者のない児童、虐待されている児童その他環境上養護を要する児童を入所させて、これを養護し、あわせて退所した者に対する相談その他の自立のための援助を行うことを目的とする施設とする」とされています。

 入所の際には、児童相談所の所長の判断で都道府県知事が入所措置を決定する仕組みになっています。後ほど改めて紹介しますが、入所にあたっては「児童相談所の所長」の権限が大きく影響することになります。

 

 施設は近年、児童福祉法が改正され家庭的養護が推進されていることから小規模化の傾向が進んでいます。厚生労働省が平成29年に発表した資料(社会的養護の現状について〈参考資料〉)によると、平成20年から24年にかけて大舎が減り、中舎、小舎が大きく増えており実際に家庭的な環境が重視されてい
ることがわかります。

「児童養護施設」と聞くと、保育園や学校のような建物をイメージする人が多いのではないでしょうか。実際に、私も施設を訪れるまではその
ようなイメージを持っていました。

 建物に入ると、多くの場合は長い廊下に大きめの階段、図書室などの共用スペースなど、まさしく私たちが子どもの頃に通った学校が思い出される空間が広がっています。

 しかし各部屋のドアを開けると、そこには教室ではなく、フローリングのリビングやキッチン、寝室、お風呂、洗面所……すなわち「家」の世界が広がっています。アットホームな雰囲気で、子どもたちが寛いで過ごせる環境であることが、非常に印象的でした。

 毎日の食事は調理師や職員の方が作り、みんなが座れるテーブルで料理を囲んで食べます。

 予定があって帰りが遅くなる子どももいますし、そのあたりも普通の家庭と変わりません。

 寝る時には、小さい子どもたちは一緒の部屋でみんなで寝ます。ある程度大きくなってからは、個室が用意されるケースが多いようです。

 朝は学校に行き、授業を受けて部活に出て、帰ってくる。食事をしてからは、どのチャンネルにするか話し合いつつテレビを観たり、部屋で自分の時間を過ごしたりして、お風呂や洗濯をした後、就寝します。

 そこで営まれているのは、一見すると普通の「家」とほとんど変わらないような一日です。

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『インターネット赤ちゃんポストが日本を救う』
著者:阪口 源太(著)えらいてんちょう(著)にしかわたく(イラスト)

 

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親の虐待や育児放棄を理由に国で擁護している約4万5000人の児童のうち、現在約7割が児童養護施設で暮らしています。国連の指針によると児童の成育には家庭が不可欠であり、欧米では児童養護施設への入所よりも養子縁組が主流を占めています。

本書ではNPOとしてインターネット赤ちゃんポストを運営し、子どもの幸せを第一に考えた養子縁組を支援してきた著者が国の制度である特別養子縁組を解説。実親との親子関係を解消し、養親の元で新たな成育環境を獲得することができる特別養子縁組の有効性を、マンガと文章のミックスで検証していきます。

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阪口 源太

さかぐち げんた

NPO法人全国おやこ福祉支援センター代表理事

1976年福井県生まれ。NPO法人全国おやこ福祉支援センター代表理事。自ら創業したIT会社を売却後、東日本大震災をきっかけに社会起業家に転身し、NPOを設立。大阪を拠点として、特別養子縁組のサポートに携わる。著書に「産んでくれたら200万円 -特別養子縁組の真実-」(Kindle版)がある。


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  • 阪口 源太
  • 2019.08.02