日本全国に数多ある名字に高校生の時から興味を持ち、研究を始めた高信幸男さん。自身が全国を行脚し出会ってきた珍名とそれにまつわるエピソードを紹介する。 
 

「暑さ寒さも彼岸まで」と言われるように、秋の彼岸を迎えると涼しくなる。栗や柿、梨や林檎など日本各地で様々な果実や食物がとれることから、「実りの秋」、「食欲の秋」とも呼ばれている。

 名字にも、果物の名前を使ったものがある。初夏から秋にかけての果物である琵琶(びわ)・桃(もも)・杏(あんず)・栗(くり)・柿(かき)・梨(なし)・林檎(りんご)・蜜柑(みかん)・橙(だいだい)・柚(ゆず)などである。

 しかし、日本に昔からある葡萄(ぶどう)という名字がない。現代で見かける巨峰やマスカットのような葡萄はなかったものの山葡萄を食していたので、なぜ葡萄の名字が存在しないのか不思議である。唯一、葡萄原(ぶどうはら)という名字がある。

 果実の名字は、それぞれの果実の栽培に関係して付けられたものと思われるが、林檎については果物ではなく地名である。林檎という名字のもととなった地名は林郷(りんごう)で、実際に林郷(りんごう)という名字も存在している。「りんご」に「林檎(りんご)」の文字を当てたと考えられる。

 他にも、食べ物の名字では、菓子(かし)・飴(あめ)・餅(もち)・大福(だいふく)・外郎(ういろう)などがある。

 また、カップ麺はないが素麺(そうめん)という名字もある。「ういろう」というお菓子があるが、これは外郎さんの先祖が約600年前に作った菓子で、名字をそのまま菓子の名前にとって「ういろう」と呼ばれている。また、富山県射水市新湊にある「菓子」という名字は、先祖が漁師であったことから魚河岸(うおがし)の河岸を「菓子」に変えて名字にしたと考えられる。