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日本の水が標的に!? 世界の水事情は急変中!
―世界の水ビジネスの今―

日本の水が危ない⑤

世界の水事情は急変中。日本が水メジャーの標的になっているとされ、水道の将来を考えるには、世界の水市場の動向や構造を知ることが欠かせない。『日本の「水」が危ない』六辻彰二 著より

【水ビジネスを活性化させる四つの変化】

 

 コンセッション方式の導入により、これまで「水鎖国」に近かった日本の市場は、海外企業にも開放された。しかし、水メジャーと呼ばれる欧米の巨大な水企業は、世界各地で少なからず悪評を買ってきた。日本が水メジャーの標的になっている以上、水道の将来を考えるには、世界の水市場の動向や構造を知ることが欠かせない。そのために、以下ではまず、世界の水ビジネスについてみていこう。

 さまざまな批判を招きながらも、世界の水ビジネスはこれまでになく活発化している。オランダの資産運用会社RobecoSAMによると、2014年に約6000億ドル(約60兆円)だった世界の水ビジネスの市場規模は、2018年に7000億ドル(約70兆円)に達した。この驚異的なまでの規模とペースからすれば、日本の2018年改正水道法は、周回遅れでも逆行でもない。ただし、世界で活発化する水ビジネスの多くは、先進国よりむしろ開発途上国でのものである。

 

 日本総研の調査によると、東南アジアでの民間企業に経営される水道の給水人口は、2007年には3億1500万人だったが、2012年までに4億1130万人に増加した。この間、西ヨーロッパでの民間企業による給水人口が1億8100万人から1億8860万人と微増だったことを考えると、たとえ民営化率は低くとも、東南アジアの方が水市場としての将来性は大きい。東南アジアだけでなく、ラテンアメリカや中東でも、水ビジネスの活発化はうかがえる。

KEYWORDS:

『日本の「水」が危ない』
著者:六辻彰二

 

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 昨年12月に水道事業を民営化する「水道法改正案」が成立した。
 ところが、すでに、世界各国では水道事業を民営化し、水道水が安全に飲めなくなったり、水道料金の高騰が問題になり、再び公営化に戻す潮流となっているのも事実。

 なのになぜ、逆流する法改正が行われるのか。
 水道事業民営化後に起こった世界各国の事例から、日本が水道法改正する真意、さらにその後、待ち受ける日本の水に起こることをシミュレート。

 

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六辻彰二

むつじしょうじ

国際政治学者

1972年生まれ。博士(国際関係)。国際政治、アフリカ研究を中心に、学問領域横断的な研究を展開。横浜市立大学、明治学院大学、拓殖大学などで教鞭をとる。著書、共著の他に論文多数。政治哲学を扱ったファンタジー小説『佐門准教授と12人の政治哲学者―ソロモンの悪魔が仕組んだ政治哲学ゼミ』(iOS向けアプリ/Kindle)で新境地を開拓。Yahoo! ニュース「個人」オーサー。NEWSWEEK日本版コラムニスト。


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