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元NHKアナウンサーの逮捕前日 “混ぜて作った薬品”が僕の人生を大きく変えた・・・

後悔と懺悔の独白および、底からのリカバリーした元NHKアナウンサーの話

 

■ずっとマークされていた

 私は、指定薬物である亜硝酸イソブチルが含まれた液体を持っていた罪で逮捕されました。

 亜硝酸イソブチルは、「ラッシュ」と呼ばれる危険ドラッグに含まれているものです。

 1990年代からアダルトショップなどで、セックスドラッグとして販売されていました。アロマオイルと同じような大きさの小瓶に入った液体で、マジックインキのような揮発性の匂いがします。その匂いを嗅いでしばらくすると、心臓がバクバクし始め、強いアルコールを飲んだ時のようにトロンとした軽い酩酊状態になる。持続時間は短くほんの数分です。効果がなくなった時点で再び嗅ぐ。セックスドラッグなので、果てれば終わります。俗に言う賢者タイムの間に、効き目はなくなるものでした。

 特に男性同性愛者の間で流行していましたが、男女問わず愛好者はいて、それなりに使われていたそうです。

 私自身のセクシャリティはゲイで、学生時代からラッシュはよく使っていたものです。主な販売場所は、アダルトショップと言われていますが、街中にある本屋や雑貨店などでも1000円くらいで売られているほど流通していたため、当時はドラッグとしての認識すらありませんでした。

 ところが2006年頃から販売の規制が始まり、2014年には、所持や使用が禁止されてしまいます。

 規制に至った理由は諸説あって、他のドラッグへの入り口(ゲートウェイドラッグ)になるとして取り締まった、販売元を押さえたかったなど様々ありますが、当時社会問題になっていた「危険ドラッグ」を取り締まるため、ラッシュもまとめて包括指定したというのが、大きな理由として考えられています。

 

 私にとっては、あればちょっと楽しめるご褒美みたいなものでしたが、手に入らなくても、特に困るほどのものではありませんでした。そんな中、「懐かしいラッシュに似た効果を出せる液体を作り出すことに成功した!」というサイトを偶然見かけます。興味本位でサイトを見てみると、使っている材料は全部合法だといいます。希望する人には、作るための製造キットを分けてくれるとも書いてありました。当時の私は沖縄局に勤務していて、付き合っていたパートナーと一緒に住んでいたのですが、作り方を見ると「冷蔵庫で一晩寝かす」など、ちょっと面倒くさい工程があります。そもそも、謎の液体を冷蔵庫に入れていたら、パートナーに絶対怪しまれるでしょう。「一人用」で使いたかった私は、購入することなく、そのうちサイトの存在自体も忘れていました。

KEYWORDS:

『僕が違法薬物で逮捕されNHKをクビになった話』
著者/塚本堅一

 

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NHKのアナウンサーとして順風にキャリアを重ね、東京勤務になってからは夕方5時の帯ニュース番組を担当し、「さあこれからだ!」という矢先に違法薬物で逮捕。さらに違法という自覚も無く、自分自身で製造まで行っていたという。そんな氏が、そもそもなんで薬物に手を出したのか、依存するようになったのか。後悔と懺悔の独白および、底からのリカバリーなど、自身の経験をこと細かに独記し、薬物使用に対する警鐘本とする。
 

塚本 堅一

つかもとけんいち

元NHKアナウンサー

元NHKアナウンサー。明治大学卒業後、2003年にNHKに入局。京都や金沢、沖縄勤務を経て2015年に東京アナウンス室に配属。月~金の夕方5時の帯番組『ニュースシブ5時』のリポーターを担当し、全国5時台の顔になる。2016年1月に液体状の危険ドラッグ「ラッシュ」の所持・製造で逮捕され、翌2月に懲戒免職となった。略式起訴~釈放後は“社会的制裁”からうつ病になり、国立精神・神経医療研究センターの松本俊彦医師の勧めで、依存症からの回復施設「RDデイケアセンター」に通所。現在は自助グループに参加しつつ、依存症予防教育アドバイザーとして各種NPO主催の依存症関連イベントにて司会や講演活動を行っている。


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  • 塚本 堅一
  • 2019.08.26