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安倍総理は「政府不信」で支持される!?

令和の真相⑳

◆戦後は続くよ、どこまでも

 「戦後レジーム(体制)からの脱却」などというスローガンを唱えた過去があるせいか、安倍総理にはとかく「戦後を否定したがる人物」というイメージがまとわりつく。
 とはいえ今や、これはまったくの誤解です。

 安倍総理の人気を支えているのは、戦後平和主義の際立った特色にして、われわれのアイデンティティの基盤ともいうべき「政府不信」。
 その意味で総理こそ、戦後日本にふさわしい政治指導者の完成形にほかなりません。
 だからこそ、11月には在任期間が歴代1位となるのです。

 た・だ・し。
 これは総理の悲願である憲法改正が、見果てぬ夢のまま終わることも暗示します。

 日本国憲法の世界観こそ、戦後の政府不信の原点。
 すなわち安倍総理の人気の原点も、じつは憲法なのです。
 それを変えようとするなど、自分の支持基盤をみずから突き崩すにひとしい。
 民意にしたところで、そんなことは望んでいないはず。

 安倍内閣が「何をやっても勝てる」ほどの安定した人気を誇りつつ、参院選で改憲勢力が3分の2を維持できなかったのも道理ではありませんか。
 総理を「戦後日本にふさわしい政治指導者の完成形」と見なせばこそ、有権者はそれだけの議席を与えなかったのです。

 今後、総理は野党の切り崩しを図ることで、改憲論議の進展を図ると言われます。
 しかし今までの分析を踏まえれば、切り崩しが成功したとしても、論議はまとまらないか、戦後脱却とは無縁の方向、それどころか「戦後レジーム」を強化する方向へと進んでゆくに違いない。
 憲法改正は戦後を脱却するための切り札のはずだったのに、これでは本末転倒です。

 たとえば九条については、現在の条文はそのままにして、自衛隊の存在を明記した第三項を追加する案が持ち上がっている。
 けれども「自衛隊」などという中途半端な組織ではなく、正式な国軍を持てるようにするのが、九条をめぐる改正の本来の趣旨。
 憲法に「自衛隊」の名称を明記してしまえば、国軍への変更はますます難しくなってしまいます。

 ゆえに憲法改正は見果てぬ夢なのです。
 改憲が(奇跡的に)実現したとしても、そうなのです。
 爽快だと思いませんか?

 戦後は続くよ、どこまでも。
 令和初の国政選挙は、そんなメッセージを残したのでした。

(了)

 

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佐藤 健志

さとう けんじ

佐藤健志(さとう・けんじ)
 1966年、東京生まれ。評論家・作家。東京大学教養学部卒業。
 1989年、戯曲『ブロークン・ジャパニーズ』で、文化庁舞台芸術創作奨励特別賞を当時の最年少で受賞。1990年、最初の単行本となる小説『チングー・韓国の友人』(新潮社)を刊行した。
 1992年の『ゴジラとヤマトとぼくらの民主主義』(文藝春秋)より、作劇術の観点から時代や社会を分析する独自の評論活動を展開。これは21世紀に入り、政治、経済、歴史、思想、文化などの多角的な切り口を融合した、戦後日本、さらには近代日本の本質をめぐる体系的探求へと成熟する。
 主著に『平和主義は貧困への道』(KKベストセラーズ)、『右の売国、左の亡国 2020s ファイナルカット』(経営科学出版)、『僕たちは戦後史を知らない』(祥伝社)、『バラバラ殺人の文明論』(PHP研究所)、『夢見られた近代』(NTT出版)、『本格保守宣言』(新潮新書)など。共著に『対論「炎上」日本のメカニズム』(文春新書)、『国家のツジツマ』( VNC)、訳書に『[新訳]フランス革命の省察 「保守主義の父」かく語りき』( PHP研究所)、『コモン・センス 完全版』(同)がある。『[新訳]フランス革命の省察 「保守主義の父」かく語りき』は2020年12月、文庫版としてリニューアルされた(PHP文庫。解説=中野剛志氏)。
 2019年いらい、経営科学出版よりオンライン講座を配信。『痛快! 戦後ニッポンの正体』全3巻に続き、現在は『佐藤健志のニッポン崩壊の研究』全3巻が制作されている。

 

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