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安倍総理は「政府不信」で支持される!?

令和の真相⑳

◆選挙結果は必然だった!

 最近の安倍内閣の政治は、内政であれ外交であれ、国家や国民の利益を守っているとは到底評しがたい。
 そんな政権を支持するとは、わが国の民意は一体どういう民意なのか?
 記事の冒頭、私はそう述べました。

 しかるにお立ち会い。
 戦後日本人は「政府不信」をアイデンティティとしており、そのせいで(1)財政均衡主義、(2)グローバリズムと対米従属、(3)新自由主義、(4)政治へのシニシズムを肯定しているという前提に立つとき、選挙結果はまったく必然のものとなります。

 安倍内閣の政治に見られる特徴は、否定されるべきものばかりのようでありながら、政府不信のもとでは肯定されるか、少なくとも正当化されるものに早変わりするのです!

 具体的に行きましょう。

A)財政均衡主義によって肯定・正当化されるもの

 消費税増税
 年金支給開始年齢の引き上げ
 国民の貧困化や格差拡大の進
 (※)対策を講じるよりも、財政健全化のほうが優先されるので。

B)グローバリズムと対米従属によって肯定・正当化されるもの

 外国人労働者受け入れ
 IR誘致
 農業や漁業への外資参入の促進
 インバウンド促進による各種トラブルの増加
 通商交渉におけるアメリカへのさらなる譲歩
 日朝首脳会談の無条件開催
 北方領土返還交渉の実質放棄

C)新自由主義によって肯定・正当化されるもの

 年金支給開始年齢の引き上げ
 水道事業の部分民営化
 国民の貧困化と格差拡大の進行
 (※)そんなことは自己責任に決まっているので。

D)政治へのシニシズムによって肯定・正当化されるもの

 統計数字をめぐる不正
 衆参予算委員会の長期にわたる開催停止
 都合の悪いことは何であれ、暴言を吐いて逆ギレするか、否認してごまかせばいいと構える態度

 安倍内閣は、しっかり成果を挙げていることになるのです!

 残るは「韓国へのヒステリックな強硬姿勢」ですが、これが支持される理由も簡単に説明できる。

 国家や国民の利益を損なうような政治を、政府不信ゆえに肯定・正当化しなければならないとなれば、どうしたってストレスがたまります。
 そのストレスを、隣国への感情的な反発をつのらせる形で発散しているのですよ。
 要は八つ当たりですが、韓国もわが国に八つ当たりを繰り返してきた過去がありますので、お互いさまというところでしょう。

 

◆野党はなぜ支持されないか

 野党(とりわけ左翼系の野党。以下同じ)が支持されない理由も、今までの考察によって解き明かせます。
 憲法改正について否定的であることが示すように、これら野党は、与党(わけても自民党)以上に平和主義を信奉している。
 ならば政府不信も強くて当たり前。

 はたせるかな、財政均衡主義については野党の多くも肯定的です。
 55年体制のもと、長らく野党第一党だった社会党(現・社民党)など、政府が負債を抱えることを原則として禁じた財政法第四条について、憲法九条と並ぶ平和主義の縛りと位置づけたくらい。
 ナショナリズム否定の傾向も顕著で、ゆえにグローバリズムとも相性がよろしい。

 と・こ・ろ・が。

 対米従属となると、野党は一転して否定的になる。
 日本がアメリカの世界戦略に巻き込まれ、憲法九条の理想が損なわれるからという理屈です。
 しかしその場合、わが国の存立のよりどころは「諸国民の公正と信義」以外になくなってしまう。
 野党の平和主義が、非現実的な観念論と批判されるのも、決してゆえのないことではありません。

 のみならず。

 政府不信を掲げたら最後、新自由主義だって肯定せざるをえなくなるのに、社会保障系の行政サービス、わけても弱者救済の性格を持ったものとなると、充実を叫ぶのが野党の定番。
 与党に比べて、非現実的なうえに矛盾しているのです。

 支持されないのも道理ではありませんか!

 1993年と2008年に起きた野党への政権交代が、そろって自滅的失敗に終わったことも、関連して付記しておきましょう。

 

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佐藤 健志

さとう けんじ

佐藤健志(さとう・けんじ)
 1966年、東京生まれ。評論家・作家。東京大学教養学部卒業。
 1989年、戯曲『ブロークン・ジャパニーズ』で、文化庁舞台芸術創作奨励特別賞を当時の最年少で受賞。1990年、最初の単行本となる小説『チングー・韓国の友人』(新潮社)を刊行した。
 1992年の『ゴジラとヤマトとぼくらの民主主義』(文藝春秋)より、作劇術の観点から時代や社会を分析する独自の評論活動を展開。これは21世紀に入り、政治、経済、歴史、思想、文化などの多角的な切り口を融合した、戦後日本、さらには近代日本の本質をめぐる体系的探求へと成熟する。
 主著に『平和主義は貧困への道』(KKベストセラーズ)、『右の売国、左の亡国 2020s ファイナルカット』(経営科学出版)、『僕たちは戦後史を知らない』(祥伝社)、『バラバラ殺人の文明論』(PHP研究所)、『夢見られた近代』(NTT出版)、『本格保守宣言』(新潮新書)など。共著に『対論「炎上」日本のメカニズム』(文春新書)、『国家のツジツマ』( VNC)、訳書に『[新訳]フランス革命の省察 「保守主義の父」かく語りき』( PHP研究所)、『コモン・センス 完全版』(同)がある。『[新訳]フランス革命の省察 「保守主義の父」かく語りき』は2020年12月、文庫版としてリニューアルされた(PHP文庫。解説=中野剛志氏)。
 2019年いらい、経営科学出版よりオンライン講座を配信。『痛快! 戦後ニッポンの正体』全3巻に続き、現在は『佐藤健志のニッポン崩壊の研究』全3巻が制作されている。

 

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  • 2018.09.15