何をやっても勝てる安倍内閣を支える民意
令和の真相⑲
◆何をやっても勝てる安倍内閣
7月21日に行われた参議院選挙は、自民党と公明党の与党が改選議席の過半数を獲得して勝利を収めました。
ただし憲法改正に前向きな姿勢を示す、いわゆる改憲勢力の議席数は、発議に必要な3分の2を割り込むことに。
わが国の野党は、55年体制のころから、憲法改正を阻止するだけの議席を保つことを最大の目標としてきましたが、それは達成されたわけです。
とはいえこの結果、考えてみればスゴい話。
2019年に入り、経済は冷え込みの色を強くしています。
4月〜6月期のGDP速報値(季節調整値)が、前期比0.4%増で「想定外の伸び」と評されるくらい。
実質賃金は2019上半期を通じて、前年同月を下回りました。
とかく成果を強調したがる政府の景気判断すら、良くて据え置き、悪ければ下方修正です。
<参考>
「GDP1.8%増、消費堅調で想定外の伸び 4~6月年率」
「景気判断6年ぶりに「悪化」、一致指数、外需が低調」
「6月実質賃金は前年比0.5%減、物価高止まり響く=毎月勤労統計」
「景気判断据え置き=生産は上方修正-月例報告」
しかも10月には消費増税が待っている。
8%を10%に引き上げるというと「2%増」という感じですが、これはあくまで税率の話。
10÷8=1.25なので、税金自体は今までより25%増えるのです!
普通ならこれだけで、与党は敗北か、少なくとも大苦戦してしかるべきところ。
そのためでしょう、6月ぐらいまでは「消費増税の凍結を宣言したうえで、ダブル選挙にでも打って出ないことには、与党(わけても自民党)は負けるのではないか」という観測がありました。
しかし総理は消費増税を撤回せず、衆院も解散しないまま選挙に臨む。
それでなお、これだけの議席を獲得できるのです。
2012年に政権を取り返して以来、安倍総理は国政選挙で6連勝。
野党のみなさんには申し訳ありませんが、安倍内閣、ないし自民党政権は、もはや何をやっても勝てるという感じではありませんか。
◆与党の選挙結果を検証する
今回、自民の獲得議席は57。
公明は14議席なので、あわせて71。
改選過半数の63議席を余裕でクリアーしました。
両党の非改選議席数は70(自民56+公明14)ですから、合計141議席と、参院全体の過半数(123)も軽々とクリアー。
ただし維新の議席が10にとどまったので、改選された議席のうち、改憲勢力の数は81となりました。
非改選議席に占める改憲勢力の数は79(自民56,公明14,維新6,無所属3)ですから、あわせて160。
参議院全体の3分の2、164議席を確保するには4議席足りなかった次第です。
自民の獲得議席数57は、改選前(66)より9議席少ない。
2013年ほどには勝てなかったのですが、これは6年前が勝ちすぎだったというべきでしょう。
論より証拠、自民の非改選議席数(=2016年の当選者)は56。
2019年のほうが1議席多くなっています。
今回からは選出される議席の総数も3つ増えましたので、「2016年を上回る勝利」と言えるかどうかは微妙なところ。
だとしても、ただでさえ良くない景気がいっそう悪化しそうな中、増税を掲げて選挙に挑み、前回と並ぶ結果を出せたのです。
なるほど、自民党の総議席数113は、参院の過半数ライン(123)を割り込んでいます。
公明党との連携が欠かせないゆえんですが、これにしたところで「安倍総理の失点」とは形容できません。
平成以後の参議院において、自民が単独で過半数を獲得したのは、2016年〜2019年の3年間のみなのです。
昭和期の自民党(※)は、ほとんど毎回、単独で参院の過半数を確保できていましたので、往年に比べればパワーダウンしているのは事実。
しかし、そんなことを言い出したら、平成の日本そのものが、昭和期に遠く及んでいません。
いかなる国も、みずからのレベルに見合った与党しか持てないのであります。
(※)自民党が誕生したのは1955(昭和30)年なので、ここでいう「昭和期」とは、むろん昭和後半期のことです。
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