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MMTを批判するエリートたちのどうしようもない愚民観

日本のMMTブームの仕掛け人・中野剛志(評論家)が緊急寄稿

■あり得ない成長戦略を20年も採りつづけた平成の日本

 

 さて、インフレでは、消費や投資が拡大して、需要過剰・供給不足になるので、ますますインフレが進んで止まらなくなるように思われるかもしれません。

 しかし、そう簡単には、そうはならないのです。

 それは、なぜか。

 インフレで拡大するのは、消費だけではありません。「投資」も、です。
 設備「投資」であれば、数年後、生産設備が完成して稼働すれば、供給力が高まります。
 技術開発「投資」であれば、将来、技術革新が起きれば、供給力が高まります。
 教育「投資」もまた、将来、優れた知識や技能をもつ人材を増やすので、やっぱり供給力が高まります。
 要するに、インフレで拡大した「投資」は、今は「需要」を増やしますが、近い将来には「供給」を増やすのです。

 したがって、インフレによって、一時的に需要過剰・供給不足になっても、少し経つと投資の成果が出て、供給力が高まるので、供給不足は解消へと向かい、インフレ圧力が弱まります。

 でも、インフレが続く間は、投資は拡大し、また需要過剰・供給不足になる。

 しかし、いずれ投資の成果が出れば、供給不足は解消される。
 これが繰り返されます。

 すると、インフレはマイルドな水準で維持されつつ、供給力が高まっていくことになります。

 これこそが、経済成長の基本的なメカニズムなのです。

 

 ちなみに、これと逆のメカニズムが働いているのが、二十年もデフレが続く日本です。つまり、デフレのせいで投資が抑制されているので、供給力は高まらず、経済成長もしないのです。

 積極財政に否定的なエリートたちは、しばしば、「財政出動はカンフル注射で、短期的にしか効かない。必要なのは、潜在成長力を高める成長戦略だ」などと、もっともらしいことを言います。

 しかし、財政赤字を拡大してインフレになると、民間の設備投資や技術開発投資も増えるので、それで「供給力」=「潜在成長力」が高まり、持続的な経済成長が実現するのです。

 デフレ下では、財政出動なしの成長戦略など、あり得ないのです。

 そんなあり得ない成長戦略を、虚しく二十年も捜し続けたのが、平成の日本でした。

 

 ところで、高インフレの例として、よく挙げられるのが戦争です。

 戦争は、どうして高インフレを起こすのでしょうか。

 まず、戦争になると、軍艦や大砲の需要が、拡大します。

 しかし、軍艦や大砲は、生産設備ではないので、供給力は高まりません。

 平時の投資は、需要を拡大した後に供給力を高めます。これに対し、戦時の投資は、需要を拡大するだけで供給力を高めないのです。

 また、徴兵によって労働者が戦争に駆り出されるので、労働者不足になり、供給力はむしろ下がります。

 加えて、敵の攻撃によって生産設備が破壊され、労働者が犠牲になれば、需要過剰・供給不足は、いっそう深刻になります。

 だから、戦時においては、平時と違って、インフレが高進しやすいのです。

 MMTを批判するエリートたちは、よく、戦時中や終戦直後の高インフレを「歴史の教訓」として持ち出してきます。

 しかし、これは「戦争をすると高インフレになる」という教訓ではあるかもしれませんが、「財政赤字を拡大するとインフレが止まらなくなる」という教訓ではないのです。

 

 どうも、エリートたちは、MMT支持者を愚民扱いしている割には、経済について、よく分かっていなかったようですね。
 むしろ、MMTについて知った一般の人々の方が、経済をよく理解しているのです。

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中野 剛志

なかの たけし

1971年、神奈川県生まれ。評論家。元京都大学大学院工学研究科准教授。専門は政治思想。96年、東京大学教養学部(国際関係論)卒業後、通商産業省(現・経済産業省)に入省。2000年よりエディンバラ大学大学院に留学し、政治思想を専攻。01年に同大学院にて優等修士号、05年に博士号を取得。論文“Theorising Economic Nationalism”(Nations and Nationalism)でNations and Nationalism Prizeを受賞。主な著書に『日本思想史新論』(ちくま新書、山本七平賞奨励賞受賞)、『TPP亡国論』(集英社新書)、『日本の没落』(幻冬舎新書)、『目からウロコが落ちる 奇跡の経済教室【基礎知識編】』『全国民が読んだら歴史が変わる 奇跡の経済教室【戦略編】』(KKベストセラーズ)。  

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