|#01 友だちだって言ったよな!』

 

 いよいよ夏休み!

 旅行の計画はお決まりでしょうか? 旅先には何を使って移動されますか? 飛行機? 電車? 船? それとも車?

 目的地によって移動手段はいろいろでしょうが、旅行中はなにかと車を使う機会が多いかと思います。空港へのリムジンバス、現地でのツアーバス、レンタカー、そしてタクシーと。
 楽しい旅の計画に水をさすつもりはありませんが、旅先での車の利用は気をつけてください。いろいろな危険がひそんでいますから。

 若い女性2人がアメリカを旅した時の話です。

 旅慣れた2人はホテルに落ち着くと、さっそくレンタカーを借り、郊外の名所へと向かいました。ドライブが好きだったこともあり、あちこちと欲ばって見学をし、インスタ映えする写真もたくさん撮れたことに満足した2人は、時差ボケの睡魔と闘いながら市街地へと車を走らせていました。

 あと2~30分でホテルに着くという頃、道路脇にガソリンスタンドが見えてきました。翌日は朝からアウトレットに向かう予定でしたので、ここでガソリンを入れておくことにしました。

 満タンにしてもらい、支払いはカードで、とここまでは何の問題もなかったのですが、カードを受け取った30代後半くらいの黒人の店員は、急に顔を曇らせてこう言ったのです。

「このカード、あなたの? ちょっと不審な点があるから事務所に来てくれませんか? 助手席のあなたも」

 アメリカではカードを偽物にすり替えられることもあるので注意をしていたつもりですが、怪しげな土産物屋やドラッグストアにも寄っていましたので、ひょっとしたらと思い2人は胸をドキドキさせながら店員について事務所に入りました。

 2人が事務所に入ると、店員はドアを閉め、低い声でこう言いました。

「あなたたち、後部座席の床に男がひそんでいるのを知っていましたか?」

 2人がびっくりして「男なんて乗せてない」と言うと、店員は「やっぱり」と言いました。

「最近、車の後部座席にもぐり込んで女性を惨殺する事件が続いているんです。それで女性客の車には注意するよう警察に言われていたんです。――もう通報してありますので、間もなくパトカーが来ます。それまでここに隠れていてください」

 その言葉どおり数分後にはパトカーが到着し、後部座席に隠れていた男は逮捕されました。男は連続殺人の犯人ではなく模倣犯だったそうですが、危ういところを店員の機転で助かったわけです。

 もし彼女たちがガソリンスタンドに寄っていなかったらと思うとゾッとします。

 これは恐い人間の話ですが、もちろん恐いのは人間だけではありません。この世ならざるモノも旅人を狙っているので、くれぐれも注意がいります。

 
 

 

 これは男女5人のグループが東南アジアへ遊びに行った時の話です。

 1日目、2日目とビーチで遊び、3日目には海も飽きたので心霊スポットめぐりをしようということになりました。と言っても土地の伝説にくわしいわけではないので、ネットで検索して「出るらしい」と噂されている場所を数カ所ピックアップして、それを車で順番にめぐってみることにしたのです。

 しかし、昼間からそのような場所に行っても怪しいことが起こるわけもなく、最後に行ったところもトンネルの前の小さな公園で、その国の文字が刻まれた黒い碑が立っていることを除けば日本にもありそうな場所でした。

「誰だよ、心霊スポットめぐりなんてやろうと言い出しのは?」ついに中の1人が文句を言い始めました。「こんなことならビーチで寝てたほうがましだったぜ」

 5人は気まずい雰囲気で車に乗りましたが、運転席に座った男はなかなか車を出そうとしません。

「どうしたんだよ、早く出せよ」

 みんなが口々にそう言うと、運転席の男は振り返って同乗者たちにこう言ったのでした。

「なあ、オレたち友だちだよな」

 これを聞いた4人は一斉に笑いました。けれども、運転席の男は冗談を言っている様子はまるでなく、血の気が失せた顔でさらにこう言ったのです。

「なあ、オレの足もとを見てくれないか? 何かがオレの足をつかんでいて、アクセルペダルを踏ませないみたいなんだ」

「変なこと言うなよ」

 文句を言っていた男がそう言って運転席のフロアを覗き込んでみると、フロアから青白い手が2本にゅっと出ていて、運転手の右足をつかんでいました。

「うわっ」

 4人の男女は転がるようにして車から飛び出し、道の反対側に逃げました。

「おーい、**! 大丈夫か?」

 彼らは運転席の男の名を呼んでみましたが返事はありません。
 遠巻きにしたまましばらく様子を見ていたのですが、とくに何も起きないので、車に近寄ってみることにしました。何かの見間違えか男の悪ふざけかと思ったのです。

 そっと車の中を覗き込んでみると、驚いたことに男の姿がありません。車のことはみんながじっと見つめていたので、知らぬ間にどこかに抜け出したとは考えられません。

 まさか、あの手に…………と、一同が思った、その時、

「オレたち友だちだって言ったよな」

 という男の声が聞こえました。

 ぎょっとして一同が声がしたほうを向くと、地面に男の顔が浮かび上がっていました。

 顔は数秒で沈むように消えてなくなり、声も二度と聞こえませんでした。
 聞くところによると、その国から無事に帰ることができたのは2人だけだったそうです。